15. Chinatown
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私はこの門に気が付かなかった。いずれにせよ、世界中どこへ行っても中華街がある。漢民族の生命力は凄い。日本人は敵いません。

 9月6日(金)。ゆっくり寝たくても年のせいで、6時前後には自然に目が覚める。昔は誰も何も言わなけれぱお午まで寝ていられた。あれは一体何だったんだろう。天候は相変わらず曇り。カナダに入ってからこちら、スカッと晴れた日は1日もない。

 今日は先を急ぐ必要はない。だから朝食は中華街でお粥と決めた。7時半頃、ロビーの電話でタクシーを呼ぷ。表で待っていると、黄色のアメ車が来た。Yellow Cabというやつ。走るとカタカタ、キシキシいう。運転手は南アジア系。中華街まで10分かそこいら。料金は3ドルほど。

 街の佇まいは案外サッパリしている。横浜の中華街みたいな派手な門はないし(ガイドブックには上の写真があったが)、店の看板も控えめだから注意していないと中華街とは気がつかないだろう。一つには街路の幅が広いせいもあるのではないか。ガイドブックに「ここのお粥は世界一」とあったThe Bossを探す。家毎に番号が付いているからすぐ分かった。間口はさほどでないが、入ると奥が深い。ウエイトレスは中国系で無愛想。今までのカナダ人の応対と比較すると、正に月とスッポン。「中国人は他国に住み着いても中国文化を墨守する」というのは本当だな。お粥(Congee)はしかし、おいしかった。それに安い。4ドル。これなら無愛想でも我慢できる。

 外でタクシーを拾おうとしたが、タクシーは全然通らない。そもそも流しのタクシーというのが少ないのではないか。そのうち家内が目の前を通るバスを指し、「このバスはホテルの近くを通るバスよ」と言い出した。地図の路線図ではそうなっていると。「じゃ乗るか」と、走って行って飛び乗った。こと地理・方角に関する限り、我が女房殿の言うことは全く当てにならない。それは百も承知なんだが、バンクーバーの街はそんなに広くない。だから間違えたところで高が知れている。「迷ってみるのも面白いではないか」という気があった。果たしてバスはホテル方向(南西)には曲がらず、真っ直ぐ西進する。「ホテルの位置はもう後ろになったな」と感じるままに言うと、女房殿心配して「どうしよう。誰かに聞こうか?」。 「聞こうか?」って言ったって、自分じゃ聞けないんだから・・。

 目の前に東洋系の中年女性が座っていたので、 「YWCAホテルへ行きたいのだが」と相談する。 「OK。私の行く所の近くだから一緒に行ってあげる」とニッコリ。小柄でやや色黒。中国南方系かベトナム系に見える。 「日本人か?」と質問がくる。「しかり」。「私は1980年頃日本で働いたことがある」。「東京で?」。「そう」。「日木語は話せますか?」。 「ちょっとだけ」。ここだけは日本語。 「これからどこへ行くのか?」と言う。「今日はヴィクトリアヘバスとフェリーを乗り継いで行く」。 「フェリーを降りてからはレンタカーでも借りるの?」。「いや歩きます」。目を丸くして「歩くなんて無理」。「ではタクシーに乗る」。「ヴィクトリアまで40分もかかるんだから、それは高くつく。バスに乗りなさい」。当方フェリーはヴィクトリアに直接着くんだと思っていたが、それはどうも違うらしい。

 そのうちに「ここで」と言われて一緒に降車。その女性がスタスタ歩くのに付いていくと、すぐに向こうのモダンで大きなビルを指して、「あれがYWCAです」。ちょっとおかしい。外壁の色が違うし、周りの雰囲気も違う。しかし、はっきり「違う」と言い切れる自信もないので、丁重に礼を述べ握手して別れた。彼女は長いコートの裾を翻して去って行く。建物の前まで行ったがやっぱり違う。家内は「YWCAと書いてあるよ」。言われて上を見上げると、確かに外壁に大きく「YWCA」とある。これは本部オフィスに違いない。いずれにせよ現在位置を確かめて、それから動こうと地図を広げ、中華街から走ったコースを推定していたらさっきの女性が戻って来た。歩きながら振り返って見ていたのだろう。「違いましたか?」。「我々はホテルに戻りたいのですが・・」。その女性すぐビルの中に入って、中に居た職員に「ホテルへはどう行ったらよいか」聞いてくれた。そして「ついていらっしゃい」と、今来た道を戻るではないか。

 どうも感じからするとこの人、出勤途中のようだ。時刻は9時前。遅刻させては申し訳ない。時計を指し「遅刻するから我々に構わず行って下さい」と言うが、「It’s ok!」と早足で歩いて行く。さっきパスを降りた辺りまで来たら、辺りは何だか見たような風景ではないか。向こうに地下鉄パラッド駅の入り口が見える。 「ああ、ここは知っています。バラッド駅だ」。「それなら後は行けますね」。「勿論。本当に有り難う」と再び握手。彼女サッと身を翻し早足で歩いて行く。やっぱり急いでいたんだ。大したことではないかもしれないが、親切が身に泌みた。

 ホテルに戻り荷造りして精算。フロントの女性にヴィクトリアへの行き方を教えてもらう。スタジアム駅から東へ1駅のメイン駅で降り、5分歩くとパスステーションがある。そこからビクトリアへ直行パスが出ている。料金は23ドル。そこで「もっと安く行く方法はあるか?」と聞いたら、「パラッド駅で降り○○銀行の前から市パス#601に乗る。これの終点Ladner Exchangeで#604に乗換え、 Tsawwassenで降リフェリーに乗る。フェリーにはさっきの直行パスが乗っているから、船中でチケットを買ってそれに乗れば一番安く行ける」。スカイトレイン+市パスで1.5ドル。フェリーが6.5ドル。向こうのパスが10ドルだったか。面自そうだから乗り継ぎの方を選択する。しかし、結果としてこれは賢明ではなかった。その理由については次ページをご覧あれ。

 スタジアム駅まで、スーツケースをゴロゴロと押しながら歩く。手ぶらで歩いているときは気がつかないが、案外歩道って凸凹している。だから真っ直ぐ進まず苦労する。チケットを買ってホームに下りる。エスカレーターはないから、階段を下りるのが大変。下りた所に男が二人。こいつら、さっきもいた。スーツケース押しているから頭が低い。結果として無視して通り過ぎたら、後ろで家内が呼んでいる。何かと思えばこの男達、検札係らしい。険しい顔で睨んでいる。睨んだってあんた、制服着ていないから我々外国人に(駅員と)分かる筈ないではないか。こちら(欧州でも)では改札がない。しかしこのように突然の検札があり、無券で乗っているとペナルティがきついのだそう。

 パラッド駅近くのパス停で20分も待った。パスは止まっているんだが運転手がいない。やっと現れ客を乗せたが、市パスは横腹に荷物を格納しないから荷物は持ち込み。パスが傾いたり急停止したりすると、手で押さえているスーツケースが動き出す。South Vancouvcrの樹木が鬱蒼と茂る高級住宅地を突っ切り、橋を一つ渡るとSouth Delt.a。この辺りは工場と住宅が混在している。次第に周りは元は野原だったと思われる新開地になる。樹が少なく、家も店も比較的新しい規格だからそれと想像がつく。Ladnerで乗換。 このあと所々にバス停があるが、このバスに乗ろうと手を挙げる人はいない。運転手は相当なスピ一ドで素っ飛ばす。
船内
 Tsawwassenに到着。スーツケースを預け、チケットを買って乗船。船はちょっと見で2千噸位か。白くて綺麗。4階ロビーの客席に座り、例の本を読んでいたらいつのまにか船は動き出している。アナウンスもなし。汽笛も鳴らない。
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