18. 再 会
ロンとダン
レストランの前で。後ろはインナーハーバー。

 身繕いをして6時前にロビ一へ。少し遅れてロンとダン来たる。やぁやぁと久闊を叙す。フロントの連中もニコニコして眺めている。日本人の宿泊客は珍しい。その日本人を土地の人間が訪ねて来るのも珍しいのではあるまいか。

 ともあれ、「エムプレスホテルの近くのコーズウェイという店で食事を」というので、早速出かける。いい塩梅に雨は上がり、青空が出ている。 「ずっと降られっ放しだよ」と彼らに訴えたら、 「1週間来るのが遅かった。先週は好天続きだった」とのこと。大した距離ではないからと.店まで15分ほど歩く。街路、住宅、入り江の水面。どこをとっても綺麗だ。ゴミが落ちていない。カトマンズと比ぺると、あちらは地獄こちらは天国。
インナーハーバー

 B.C州議事堂近くに来ると、.観光客用の「カプキカー」や馬車が屯している。前者は自転車の後ろに客が二人乗れる二輸車を付けたもの。ボディーに「かぶき」と.書いてある。何で歌舞伎なのか分からない。格別の趣はないから写真は撮らなかったが、話の種に撮っておけばよかった。

パブのサンドイッチマン
 店に人ると既に満員で1時間待ちとのこと。 「ではパブへ行こう」と、こちらから提案。「パブ」なるものに一遍入ってみたかった。それならここがいいと、すぐ近くのエンプレスホテルのパブへ案内された。ここも結構混んでいる。まずはカナダビ一ルで乾杯。 「うまい」と言ったら二人とも喜んで、 「そうだろう。ビールはカナダと日本に限る。アメリカビールは水みたいで飲めたものではない」とアメリカをくさす。日本を忘れないところが可愛いじゃないか。

 それで想い出したが、彼らが拙宅に遊ぴに来たとき、アメリカを随分貶していた。カナダ人はみんなアメリカ人が嫌いなのだそうだ。理由を聞いたら「奴ら威張ってるんだ」と言う。彼らと初めて話したとき、彼らが持っていた日本語の単語集はU.S.Navyのデータペースから引き出したと言っていた。カナダ海軍の通信系統はアメリカ海軍に依存しているらしい。そこから察するに、一朝有事の際カナダ海軍はアメリカの指揮下に入ることになっているのではないか。それは面白くないだろう。もう一つ。パンフで観光パスに乗ったとき、運転手がアメリカ人には好意をもっていないように感じた。アメリカ人らしき客の質問を1、2回無規していたから。 「その反動でカナダ人は日本人には好意的なんだ」という説がある。

 更に続けて、 「ここはイギリスのパブのスタイルそのままなんだ」と言う。 「成金のアメ公とは違うんだよ」と言いたいのだろう。確かに落ち着いた造作。2,3人のウエイトレスがジョッキを両手に持って忙しくサービスしている。カウンターはあるが椅子席は無い。みんな立って飲む。ダンが途中でコーズウエイに様子を見に行くが「(番は)未だだった」と帰って来る。 「まあいいじゃないか」。何がいいのか自分でも分からないが、アルコ一ルが入ると勢いがついて、2杯目を注文。

 ロンは家を引っ越して4日目だと言う。 「それは知らぬこととはいえ、お邪魔して済まなかった」。「いやそれはいいんだが、散らかっていてお泊めできない」。「そんなこと気にしなくてもいいよ」。そんなやりとりの末、明夜はロンの新居に招待されることになった。ダンはアメリカの友人の引っ越し手伝いに行くから、明日は会えないとのこと。国境を跨いで引っ越しの手伝いとは豪気なものだ。

 席が空いたということでコーズウェイ(レストラン)に移動。窓際だと外の夜景が見られていいらしいが、あいにく一番奥だった。ここで「実は」と、ロンが身の上話を始めた。かみさんが4年前、ロンの航海中に男を作って家出。離婚訴訟がやっと1か月前に終わったところ。今は3年前に知り合った女性と同棲している。その女性は8歳年上の40歳でデコレーションケーキのデザイナー。このクリスマスに結婚する予定。前妻と子供はカルガリーに住んでいる。拙宅で「ワイフについては説明困難」と言っていたのはこういうことか。 「今の女性とはどうして知り合ったの?」。「ビーチで」。「どういう風に?」と厳しく追求。「向こうから歩いて来るのを見て、非常にセクシーだと思ったからデートに誘った」。「ハァー」。日本人は余りセクシーとは言わないから、もう一つピンとこない。まあ、明日会えるからいいか。
 ダンはまだガールフレンドがいないと。 「なぜ?」と聞いたら、カナダ女は威張ってダメだと言う。ちょうど隣のボックスに日本人ギャルがいた。「じゃ日本女性を口説いたら」とけしかけたら赤くなった。28にもなってどういうんだろ、この男。みんな何か取って食べていたが、当方飲む専門。大ジョッキ2杯空けた。ダンにパソコン通信しようと誘われる。E・NETに入っている由。通信はいいけど英語が… な。
コーズウエイで

 そんなことで盛り上がり、もう1軒行こうとジャズパブへ。ロンが「ここは彼女と初めてのデートのとき来た所だ。いい所だろ」としきりに言う。生演奏に生のボーカルでなかなかよろしい。ピーと口笛も鳴るし、賑やかで、大声上げないと会話出来ない。何しゃべったか覚えていないが、結構話は通じたように思う。

 ふと思い出して「今のホテルが明日はダメなんだ」と言ったら、「そら大変」。ダンがどこかに置いてあった車を持ってきてホテルめぐりになる。2軒目のGrand Pacific Clarionで部屋が取れた。税込み267ドル=2万2千円強。因にCoast Harborsideは176ドル=約1万5千円弱。もうこの時は酔っ払って足がフラフラ。おまけにフロントの可愛い女の子が、日本語で「私、横浜の山手学院に1年間留学していました」なんて言うもんだから、もう2万円だろうが3万円だろうが構わんと、一も二もなく決めてしまった。Coast Harborsideまで送って貰い、ダンとは「日本にまたおいで」と握手。ロンは明日4時に迎えに来る約束で別れる。ベッドに倒れ込んで朝まで熟睡。 

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