19. ヴィクトリア−2
ブッチャートガーデン−1
ヴィクトリアの観光名所ブッチャートガーデン。

 9月7日。朝7時起床。昨夜はすぐ寝てしまったのでシャワーを浴びる。天候は珍しく晴れ。着替えていたらノックの音。ドアを開けたらルームサービスの女性がいて、何やら早口で言う。サッパリわからない。辛うじて「フリーザー」と「ミッシング」が聞き取れた。冷蔵庫の中身の補充と見当をつけ、家内が飲んだジュースの空缶を渡したら「OK」と新しいのを持って来た。どうして中に入って、じかに見ないんだろうか。プライバシーに対する配慮か?

 8時に1階のレストランで朝食。ビュッフェもあったのに気がつかず、アラカルトでオーダーしてしまった。ここでもウエイトレスがきびきびしていて感じがいい。客は20人くらい。東洋系の客はいない。 「皆さん着ているもののセンスがいいね」と家内と意見が一致する。

 今日は最初にブツチャートガーデンへ行き、それから市内を見て、ロンの家に行くという予定。Coast Harborsideの車でGland Pacific Clarionまで送って貰う。運転手は昨日のベルボーイ。 「どうして移るのか?」と聞くから「Your hotel is not availab]e」。「おお、それは残念だ」。商売仇の所へ送らせるのはちょっとどうかな、と多少の逡巡があったけれど、ボーイは別に気にする風でもない。

 Gland Pacific Clarionのフロントには昨夜の子がいた。ステイシーさん。金髪で色が抜けるように白く、朱色のユニフォームがよく似合う。チェツクインのサインをしているうち、彼女の尻に荷物用のタグが付いてるのがチラリと見えた。 「あなた荷物にされているよ」と教えたが、 「エッ何でしょう」。1年間の留学では、日本語の言外の意味までは理解できないのも無理はない。英語で「Watch your hip」と言おうかと思ったが、それだと今度は別の意味に取られるかも知れない。仕方がないから日本語で「お尻を見てご覧」と言う。彼女慌てて振り向きタグを発見。引きはがしながら両サイドに立つ男を指して、 「どっちかの人がやったんですウ。もう」。見る見る白い顔が紅潮する。おお可愛い可愛い。こんな娘がいたらいいなぁ。

 荷物を預けてエムプレスホテル前へ。プッチャ一トガーデン行きパスは一人32ドル。30分毎に出る。乗客20人程で出発。.やはりみんな2階席に座る。船舶工学の方でtop heavyというのがあるそうな。読んで字の如く頭が重いということ。力学的にいうと重心が高い。傾斜に対し復原力がない。つまり、引っ繰り返りゃせんかと心配になる。運転手がマイクを使ってしゃべりながら走る。サッパリわからん。幹線から田舎道に入ると、起伏があり道が曲がりくねって時に家の庇をかすめ、牛が草をはんでいる。さながら映画で見るイングランドの田園の感じ。そんな風景を賞でるうち、30分位で到着。運転手が「11時20分に迎えに来る。パスの番号は○○○。間違えないように」と言っているのを聞きながら下車。駐車場にはツァーの観光パスなどが多数。
ブッチャートガーデン−2
 ここは昔、ブツチャートという人が石灰石を採掘した所で、その夫人が跡地の再利用策として植物園にしたのだそうな。掘った跡の起伏をうまく利用してパラ園、イタリア庭園、 日本庭園等々をうまく設らえてある。幸い好天。久しぶりに見る太陽に植えられている草花の色が映え、文句なく美しい。観光客も多い。バンクーバーよりは少ないけれど、それでも日本人がいて写真の撮りっこをしている。私もギャルのグループにシャッター押しを頼まれた。

 定刻、迎えのバスで町へ戻る。降りるとき、 「運転手にチップを上げている人がいるわよ」と家内が言う。なるほど運転手、手に5ドルくらいの札を持っている。私は上げなかった。一人32ドルは少し高いように感じていたこともあるし、特に何かして貰ったわけでもない。 道中のガイドも分からなかった。「人が上げるから横並びで・・」という意識になり勝ちだが、それはおかしい。しかしこのチップという代物、我々日本人には難物である。旅行の度に感じることだ。

 Goverment Stを歩く。風格のある店が多い。例によって家内はショッピング。こちらは街頭ウオッチング。若い女性の御者が馬車を走らせて行く。カッカッと馬蹄の響き。シルクハットに燕尾服。白い乗馬ズボンに黒の長靴。これはまさに一幅の絵ですね。一方では通行人に手を差し出し、施しを乞う奴もいる。まるで昔のロンドンの街頭に立っているような錯覚さえ覚える。何か自分の体に、英国礼賛性遺伝子がビルトインされているのでは? と疑いたくなるような感慨が湧く。

 家内はカウテンスウェーターを一つ購入。若い女店員は愛想がいいが、家内が「discount」と言った途端に厳しい顔に変わり「No!」。商売の方はしっかりしている。横丁に入り、Bar○○に入って昼飯。若い客でほぼ満員。パンと野菜スープのセットを取る。日本でBarは酒を飲む所。こちらでは軽食店なんだ。

 店を出ると雨。全くここの天候は気まぐれだ。ダンが「冬は雨が多い」と言っていた。まだ9月というのにもう冬型の気候なんだろうか。大した降りではないのでブラブラと歩いて帰る。今度のホテルはB.C.州議事堂のすぐ横だから、歩くといっても知れたもの。部屋に入るとインナはーばー、ベランダへ出れぱ右にエンプレスホテルが見える。ロンの迎えが来るまで暫らく休息。
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 ロンが正確に16時にやって来た。初期のマツダ・ファミリア3ドアに乗っている。外装が錆でボロボロ。メーターは25万キロを超えている。それでも立派に走る。ロンは気にして「近いうちに買い替える」と言うが、これでも十分ではないか。道々、 「荷物が片付いていないから」とか、 「彼女はナーバスだから」としきりに言う。荷物はいいけど、ナーバスというのはどういう意味だ?  途中路傍の家を指し、 「B.C.州で最古のパブです」。こんな片田舎に?というロケーションにある。ヴィクトリアというのはカナダ西海岸で最初に白人が取り付いた古い町。だから小さな町だが今でもB.C.州の州都です。

 かなり走って到着。道から見上げる角度でアプローチと前庭がついた平屋建て。土地は(後で見回した感じで)120坪くらいか。後庭が広いイギリス系の様式。中古で1600万円の由。ロンの相手は女優みたいな感じ。紫の服を着ている。名はアンドレア。家の中を見せて貰う。散らかっているどころか、キチンと整理されている。 リビング、ダイニング、キッチン、ベッドルームが二つに納戸みたいな部屋がある。勿論パスルーム。それに半地下室と車庫。二人暮らしなら十分過ぎるくらい。小海老とアボガド、チーズ、サーモンのオードブルで接待されている間、アンドレアはキッチンでクッキング。ロンがモーッアルトのCDをかけてくれる。お主できるのう。時々お呼びがかかり、ロンは甲斐甲斐しく立ち働く。我輩が内心「余り働かないでくれ」と呟いているのに…。こっちではみんなこうなんだろうか。

アンドレア−1
 食事はチキンの笹身のロースト(というのかな?)。隠元などが付いている。ロンが「チキンに関しては自信があるのだが、今日は焼き過ぎた」と言う。食後の団らん。写真を撮り、ビールやアップル酒で歓談。普段物静かなロンが、人が変わったみたいに彼女とベタベタする。
アンドレア−2
 アンドレアは20年前、静岡の裾野市で矢崎の社員に英語を教えていた由。「変な外人」と言われ、スーパーへ行けばビデオで写されたり、髪に触られたり、果ては入浴中に覗かれたりして、遂に1年で帰って来たと言う。こちら「あそこは田舎だから」と言うのが精一杯。更に「単に田舎というのではない。日本では在日朝鮮・韓国人やその他少数民族が差別されている。日本人には排他性がある」と追い打ちをかけられて、これには参った。スピーキング能力の不足もさることながら、向こうの言い分に一々同感だから、何と言えばよいか言葉が出てこない。日本は長い間鎖国していたからとか何とか弁解したけれど、果たして理解されたかどうか。もう少し会話能力を磨かないといかんな。

 ロンがアルバムを持ってくる。見ているうち、アンドレアが静かなんで横目で見たら座ったまま居眠りしている。「これはいかん」と立ち上がり、お暇を乞う。するとアンドレアが「私も送って行く」と車に乗り込み、ホテルまでついて来た。別れ際「次回は家に泊まってもらうから是非また来てね」と熱烈な抱擁の挨拶。家内が後で「ボインが凄かった」と言っていた。仕事で疲れていたのかもしれないが、少しエキセントリックな感じがする女性だった。ロンの言うナーバスというのはこれか。これで今回のメインイベントは終了。外は雨。シャワーを浴びて就寝。 
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