5.Calgary・downtown
カルガリータワー
カルガリタワー。1967年建築。190m。展望台までエレベーターで48秒。88年冬季オリンピックではこれが聖火台だったそうです。

 道はゆるやかな下り。ときどき小さくストンと落ちる段丘状の地形。正面に高層ビル群。その頭に雲間から洩れる微かな残照。なるほど、これなら迷う心配はない。次第に道路表示の○○th Avenueの数字が減り、道路脇の住宅と樹木が減り、事務所や商店が増えてくる。

 やがてボウ川を大きな橋で渡るとダウンタウン。最初に目に入ったビルの狭間の駐車場に乗り入れるが、番人がいない。ほぼ同時に入場した若い女性も車を降りてキョロキョロしている。結局、入口脇の小さな機械にお金を入れる仕組みらしいとわかったが、そのお金2ドル硬貨がない。その女性は何か呟きながら出て行った。小柄で中国系。払わないつもりかな?  こちらすぐ隣の中華食材店へ行き、5ドル札を出して両替して貰う。これも中国系のお兄さん。快く応じてくれ、「どう払えばいいんだ?」と聞くと、わざわざ駐車場まで来て教えてくれた。さて、と街へ向かう。そこへ向こうからさっきの女性。硬貨を手の平一杯に持ってこちらに見せる。どこかで両替して来たんだ。「使いますか?」ということだろう。「私は済みました。有り難う」と、手を振って別れる。ここの中国人は親切だ。

 大通りを中心部に向かって歩く。街灯も点いていてそんなに暗くはないのだが、ばかに寂しい。人通りがないのです。人とすれ違うのが1ブロック歩いて1回あるかないか。道路幅はちょうど銀座くらい。街路樹は銀座よりずっと大きく、欅みたいな木。しかし銀座と違って所々空地がある。商店は電気は点いているが、格子状のシャッターが下りている。つまり閉店。飛び飛びに食堂やらコーヒーショップがあって、こちらはシャッターが下りていないから営業していると分かるけれど、客が殆どいない。時刻は午後の7時半くらい。日本なら会社帰りの人で賑わう時間帯。一体どういうことだろう?

 今日は月曜日。高層ビルも電気がついている部屋は殆どない。空室でないとすれば、カナダ人は残業はしないということか。ガイドブックによればここはアルバータ州の大都会ということだが、日本の尺度ではとても大都会とは言い難い。強いて形容すれば、開発後すぐに寂れたゴーストタウン。ともあれここは初め牧畜、次いで石油が発見されて急激に発展した都市とのことです。

カルガリー市街図
 鉄道線路を渡り、カルガリータワーなるポール状の高層建築物に到着。駐車場からここまで7ブロック歩いた。途中、何カ所か駐車場があった。ここまで車で来れば良かった。乗り捨てるのが早過ぎた。1階のチケット売り場で一人5ドルのチケットを買い、エレベーターで展望台に上がる。チケット売り場には若い女性の係が二人。エレベーターでは観光客らしい中年白人のカップルと一緒になる。人がいると本当にホッとする。

 エレベーターが早い。190メートルをアッと言う間に昇る。西北の方角すぐ近くに高層ビル群があって、そちらの方は見通せない。東の方角50〜60キロ先には低い山がある。その手前をカルガリー空港に着陸する飛行機が、標識灯を点滅させながらゆっくり降下して行く。あとはほぼ平らにずっと地平線まで、宝石箱をぶちまけたような光の海。とは言っても日本みたいに光点は密集していない。何しろ土地が広い。家々の間隔が空いているのです。

 展望台のすぐ下が回転レストランになっている。家内がそこで食事をしようと言う。このあと街に出ておいしそうな店を探すつもりだったが、見っけるのに苦労しそうなのでここで済ませることにする。窓際の席に座り窓外の夜景を眺めているうち、軽いめまい。私は子供の頃から三半器官が弱くて、回転する物に乗るとすぐこうなる。船にも酔う。エスカルゴとステーキとその他2品ほど、それぞれ一人前ずつ頼む。

 周囲の客は殆どがカップル。みんな静かで、話し声は聞こえない。照明は食卓の蝋燭だけ。いい雰囲気なのだが、少し離れた所に6人くらいの中国人の先客がいて、既にアルコールが入っているとみえ、あたり構わぬ大声で話している。当方4〜5年ほど前、北京語を少し勉強したことがある。そこそこ面白かったけれど、発音の難しさに恐れ入って遂にギブアップした。そんなわけで、否応なしに聞こえる中国語の中から「酒」とか「日本」とか、断片的に単語が聞き取れる。これは広東語ではないようだ。たぷん移民で来た連中だろうが、香港系でないとすればどこだろう? いずれにしてもお国ぶり丸出し。雰囲気ぶちこわし。日本人も気をつけなくてはいけないな… と思う。

 オーダーしてからタワーを1回転したかと思われる頃、やっと料理が出てきた。量が多い。一人前ずつ頼んだのは正解だった。二人前だったら食べ切れなかったろう。エスカルゴ以外はあまりおいしくない。ガイドブックに「アルバータ牛をお試しあれ」とあったのでステーキを頼んだが、何も神戸牛とか松阪牛を持ち出すまでもなく、並みの和牛ステーキの方がおいしい。ビール2本と合計で約70ドル。スーザンさんにお払いした金額と同じ。この国の外食費は高そう。眺望代込みと考えないと合わないと感じる。

 外へ出たら風があって寒い。真っ直ぐ駐車場に向かう。さっきよりもっと人通りがない。本当にゴーストタウン。折角ここまで来たのだから、車で市内を一巡してみることにする。タワーの足元南西の方に、比較的明るい街路が見えたのでそちらへ行ってみたが、こちらもさっきの大通りと似たりよったり。興味を引く物はないうえ、右折・左折の度に反対車線に入ったり、入りそうになったり。その都度家内が「危ない !」と叫ぶから、いい加減な所で見物は取りやめ。一路宿へ向かう。家内は忽ち居眠り開始。帰ってシャワーを浴び、10時に就寝。

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