7.バンフ
エルク
町中でも鹿(エルク)が自由に歩いている。写真を撮りに近寄ると迷惑そうに逃げて行く。

 道はゆるやかな上り。左右の山が迫るとボウ川が道に接近。山が離れると川も見えなくなる。この国道1号線はボウ川が作った峡谷の底を走っているのだ。交通量は少ないが、行き交う車の半分くらいはキャンピングカー。日本は金持ちと言われるけれど、こんなにキャンピングカーは多くない。サラリーマンは住宅ローンや教育費の重圧に喘ぎ、休暇も取らずに働いている。にもかかわらず、湾岸戦争では「全戦費を賄ってもお釣りが出た」といわれる程の大金をふんだくられ、国連加盟費の額はナンバー2、海外援助額は世界一。その結果、今や財政赤字は先進国中ワーストワン。それでも何かにつけて外国から援助をねだられる。俺たちはおとなし過ぎるのではないか?  庶民は政府にものを言わな過ぎるのでは?  遥々カナダまで来ても腹が立つ。

 いつの間にか雨が止み雲が切れて、峡谷が広がった部分では山の形が見えるようになった。傾斜は急峻で、中腹までは針葉樹の森の濃い緑。樹相は日本の杉林のように一種類だけ。これではシーズンになっても紅葉は見られないかもな。上の方は黒々とした岩塊が露出。恐ろしい仁王さんが並んでいるようだ。岩の切れ込みには小さい雪渓が点在している。道路脇にキヤンプ場の標識、「GOOD VIEW」の標識などに混じり、鹿の標識が出始めた。「動物に注意」ということですね。もう人家らしいものは見えない。ときどき道のすぐ右にポウ川。進行方向とは逆のカルガリー方向に流れている。マリリンモンローの「帰らざる川」はこの辺でロケーションしたとガイドブツクにあった。

 急に前方の道路頭上に、道路を横断する標識が見えた。同時に道路がこちらだけ、5車線くらいに広がっていく。標識には車線毎に何か書いてあるが、なにせ高速で走っているから判読できない。たぷん料金所だろう。しかし、ガイドプツクにはそんなことは何も書いてなかったな。右端の列の後ろについて前の車を見ていると、ゲートで金を払っている。更に右の方を見ると、これはノーゲートの1車線で,何と車がスイスイと走り抜けて行くではないか。こんな料金所ってあるだろうか。

 自分の番が来て、ブースの中年のおばさんに向き合う。何か言っているが当方には分からない。こちらが分からないとみて、同じ言葉を繰り返す。顔つきが険しい。辛うじて「10ドル」だけ分かったから、10ドル差し出した。そしたら「どこに泊まるか?」。 「パンフ」。 「何泊lか?」。「2泊」。「なら20ドル」と20ドル巻き上げられ、代わりに何か新聞みたいな物を寄越し 「○○はこれを見せれぱフリー」と言う。納得いかないけれど後ろがつかえているから止むを得ず発進。家内が広げる新聞を横目でチラチラと見てみるが、英語だからそんなことで判読できるわけがない。大方パンフ国立公園の入園料だろうと見当をつける。何かしかし、いい加減だよな。今度来たら一番右の端を通ってやろう。

 左右の山が天辺まで見えるようになり、大きく谷が左へ曲がると、正面に上高地の屏風岩を10倍したような山が見える。やがてパンフ○○○という標識。ここでハイウウエイを下リ、しばらく林の道を行くと町に人る。案外賑やかな町だ。ホテルあり商店あり交通信号あり。車も多い。

B%B Ken Grier邸
 地図によればBuffalo Stは町の中心部を通り過ぎ、ボウ川にかかる橋の手前を左折したその通り。ゆっくり走っていくらも行かないうちに、黒い柵をめぐらした家があった。 予約の電話で「black gateを目印に」と言われていたから「これかな?」と思うが, しかしB&Bにしてはチョット立派過ぎる。(左写真)
 番地表示が出ていないので通り過ぎ、次の家になると、探しているのは529なのに531の表示。やはり黒柵の家だ。バツクしてゲート前に乗り入れ、インターコムで案内を乞う。男の声で応答あり,やがて音もなくゲートが開く。リモコンだ。前庭に乗り入れると、女の子を抱いた40くらいの男性が出て来た。この家のご主人Ken Grier。

 「どうぞこちらへ」と案内された部屋は階段を下りた裏手。ベッドルームは10畳くらいでちょっと狭いが、別に広いバスルーム。更に横に30畳くらいのホームバー付きリビングがあり、「ここも自由にお使いください」と言う。窓の外は50坪くらいの庭。その先に境界の黒い柵があって、その先は林。その林の木の間隠れにボウ川の流れが見える。車を乗り入れた正面からいうと地下だが、川の方から見ると1階。床は足首が潜る絨毯。リビングにはバカでかいNEC製のTV。どう見てもこの家はB&B専業ではない。まあいいか。荷物を置き、「これからice-fieldsに行く」とご主人に断ると、ゲート用のリモコンと家の鍵を渡された。「門限はありません。ごゆっくり」と。
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