16. 語学留学生  
体育祭
全学体育祭に参加した国際文化交流学院。語学留学生はこの学院に所属します。
 外賓楼に入ってものの1週間ほどで、朝食は外賓楼の食堂ではなく外の快餐店でとるように切り替えました。けれども、昼食か夕食となると、まだ馴れない内は外賓楼の食堂でとることが多かった。すると自然に、そこで食事している日本人と知り合うことになる。今日はその人達のお話です。

 前に書きましたが、この外賓楼には外国人語学留学生も入居しています。殆どが日本と韓国からの私費留学生です。私が着任した当時はやや日本人が多かったようですが、すぐに日本人と韓国人が拮抗するようになり、離任する時には韓国人の方が多くなっていました。なぜそうなったか?  要するに日本の景気が悪くなって日本人留学生が減った。一方、韓国の方は所得水準も上がり、且つ「これからは中国だ」と先を読んで中国に留学する人が増えた。その結果として比率が逆転したということです。なお、欧米系ではニュージーランド人女性が1人いたような気がします。

 年齢別に見ますと、韓国人はほぼ全員が若者です。対して日本人は年齢的にも階層別でもvarietyに富んでいました。高年齢層は、定年退職して暇ができた。前から中国に興味があり、中国をゆっくり旅行したいと思っていた。ならばいっそ語学留学して・・・という人達。この層は殆ど男性ですが、中には日本で中国人の駆け込み寺をやっている。どうも中国語がもう一つなのでそのbrush upに来たという女性もいました。その下の年代は駐在員の奥様が多かった。家でジッとしているのも退屈だから・・という層。その下が30代前半から20代後半の層。男2に女1くらいの割合。この人達は中国と仕事上関係がある、或いはこれから中国関係の仕事に就きたい。そういう層で、動機も年齢層も韓国人のそれと共通しています。ですから、この層には真面目に勉強する人が多い。

 ちょっとお断りしておきますが、だからと言って「中高年層は不真面目」というわけではないんですよ。高年齢の人達はこれから就職する為に勉強しているわけではありません。したがって、どことなく余裕があります。しかし、この若い人達はひたむき。真剣だということです。名前は何だったか忘れましたが、中国語能力試験の上級を目指して勉強している人が多かったですね。

 ここまではいいんですが、この下の層が問題。ごく一部ですが、日本の大学を1年休学して勉強に来ている学生がいる。この人達はいいんです。しかし、日本で大学に入れなかった。就職もしたくない。行くところが無くてここへ来ている・・・という若者が多い。中には高校も卒業できなくて・・・という子もいました。こういう連中は授業に出るのは最初のホンの短期間だけ。すぐにサボり出す。昼間は寝ている。夜になると遊びに出て行く。中には中国人女性と半同棲しているらしいのも居た。こういう連中は多分、親が世間体を憚って中国へ出しているのだと思います。中国なら東京辺りで暮すより安上がり。「息子は留学させています」と言えば、まぁ何となく格好も付く。そういうことなんじゃないか。

 まぁしかし、昼間寝ているのは目立たないからまだいいんですよ。一人20歳になったかならないくらいの若者で、曲乗り自転車に夢中なのがいた。この子は構内の体育館前の全く凹凸がない道路で、日がな一日曲乗りの練習をしている。一度私、どういうつもりなのか聞いてみたことがあります。そしたら、「曲乗りは日本ではまだこれから。ここで腕を磨いて日本に帰り、大会に出て稼ぐんだ」と言う。「練習なら日本に居たってできるだろ」と言いましたら、「こちらは広いし、いろいろ言う人がいなくて気分がいいから」という答え。これも親が甘いんでしょうね。サーカスにでも入って修行するなら兎も角、自己流で練習して果たして上達するものだろうか。傍からは遊んでいるとしか見えない。これは青空の下、往来でやっていますから否応なく目立ちます。この子を見る度に私、「中国人はこの日本人をどんな目で見ているのだろうか」と気になりました。

 他にも日本人の恥さらしという奴がいました。上の写真の一番手前の男をよく見てください。腹に何か入れている。妊婦のつもりなんです。体育祭の行進で、なんでそんな格好をする必然性があるのか? 全くナンセンス。この男は椅子がない場所に立ち、錯覚で椅子に座ろうとして尻餅ついた・・というようなわざとらしい「ふざけ」をよくしていました。笑いを取ろうとするわけです。写真のような行為は、一つ間違えれば西安の大学で起きた日本人留学生襲撃事件、ああいう騒ぎの原因になり兼ねない。しかし本人にはそういう危険性の認識が全くない。心ある人達の顰蹙を買っていました。

 「 まず全体としての日本。個人はその下」というわけではありません。順序としてはまず個人でしょう。相手が子供なら兎も角、成人ともなれば一々干渉はできない。でもその土地の人はこちらを「どこの国の人間か?」と見るわけですから、外国へ出たら言動には注意してもらいたい。ところがそういう自覚がない日本人がかなりいる。こちら、見ていて、甚だ心寒い思いをしました。 

 元に戻って、本来ここは学校なんですから、管理している国際文化交流学院は殆ど授業に出て来ない生徒を退学させるべき。なのに、うるさいことは一切言わない。なぜ言わないか。それは商売だからです。そもそも留学と言ったって、ここで何年勉強したところで卒業証書が貰えるとか資格が与えられることはない。ただ、ここで○○課程を修了したという証書を貰うだけなんです。先生も離退職した元教師がやっている。

 外事処はレッキとした大学の機関です。しかし、国際文化交流学院は卒業証書が出ないのですから、大学の正規の機関ではない。そして管理しているのは外事処。すると国際文化交流学院は外事処の副業ということになる。でも、見ているとどっちが本業か分らない。私が離任する時、「日本でお知り合いに宣伝してください」と新しく調製した募集パンフを渡されました。日本人留学生が減っているからです。外事処としては韓国人より日本人に沢山来て欲しいと考えているように受け取れました。その理由はおそらく、外賓楼の食堂利用率も、それから本国から訪ねてくる友人知人も、日本人の方が韓国人より多いからでしょう。早い話、日本人の方がお金を落とすのです。

 私なんか大学と言えば取りも直さず学問の府という感覚なんですが、どうも中国ではそうではなさそう。まず何よりも初めに「ゼニ、金、money」ありきのようでした。
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