19. 学生食堂
東部学食1
在任時はこんなに綺麗ではありませんでした。これは最近の写真です。
 朝食は外で菜包と豆腐華(固める前の豆腐)で済ませるようになり、これが安くておいしいので日々満足でした。しかし、昼食までは外の快餐店で食べる勇気がなくて、惰性で外賓楼の食堂で摂っていた。なんで「勇気」が出なかったか。まぁ正直な話、快餐店って清潔じゃないんです。けれども外賓楼の食堂は高い。外の快餐店の三倍、四倍します。それに皿の底に溜まるほど油を沢山使う。また、毎日食べているとどうしても飽きます。そこで一度、学生食堂へ行ってみた。そしたら案外清潔ですし、学生達は「おいしくない」と言いますが、私にとってはそうでもない。用意されている食物もvarietyに富んでいる。そして安い。

 私もこれからここで食べたい。学生は「それじゃカードを作りなさい」と言う。勘定はカード式なんです。窓口にカード読み取り機があります。そこにプリペイドカードを差し込む。すると残高が表示される。学生はガラス越しに品物を指して注文する。係はその対価を(キーで叩き)カードから引くわけです。ちょっと前までは現金決済だったらしい。しかし、それだと食物を扱う手でお金に触るから不潔だし、お釣りだなんだで時間も掛かる。また、おそらく不正も発生する。それでカード式になった。
東部学食2
 どうやってカードを作るの?  学生は「U主任に頼みなさい」と言う。私はもう彼と口を利くのはイヤだ。碌なことない。でもまぁしょうがない。電話で「カード作れますか?」と聞いてみた。そしたら意外なことにアッサリ、「いいですよ」という返事。次の日に彼の名義の空カードを呉れました。
 ただ「本当は外国人の先生には外賓楼で食事していただかないと我々は困るんですけどね」と笑いながら一言。そのときはまだ、清潔度とかそういう配慮でそう言うのかと好意的に解釈していました。ま、そのことはちょっと横に置いて、学生に案内されて食堂とは別の所へ行き、お金を払ってカードに充値。晴れて学食で食事ができるようになった。

 いざ自分でやってみると、これがなかなか大変なんです。席は学生が「ご一緒に」と、争って取ってくれる。しかし、食べる物には自分の好みがあります。自分で取ってくるしかない。問題は窓口の混雑。中国人って横に並ぶ。乗り物でも郵便局でも、どこでも縦に並ばない。たまに並んでいると、今度は横から割り込む。学食も同じ。上左の写真をご覧下さい。窓口に左右から詰めかけるんです。そして、仁義知らず。我れ先。私が教師と知らない学生は遠慮なんかしません。尤もここは学生食堂ですから、こちらも教師風は吹かさない。為されるがまま。

 これはM先生の経験。一度、差し込んだカードを後から来た男子学生に引き抜かれたことがあったそうです。閉店時刻ギリギリだったから、その学生は「食べ損なっちゃ大変だ」と気が焦っていたらしい。しかし、幾ら何でもそれは滅茶苦茶。M先生も流石に頭に血が上って、思わず怒鳴ってしまったそう。でもその学生は平然としていたとのこと。M先生。「北京じゃこんな事絶対にありません。上海はホントにもう・・・」と毎度の悲憤慷慨、上海批判でありました。

 これはロープを張って一方通行にするとか、窓口の作り方にもう一工夫すれば解消される問題だと思うのですが、そういう意識はまだまだ薄いんですね。それでいて、食堂内にはカラオケ室がある。一時は学生も入ったけれど、料金が高くてすぐに利用者がいなくなったそう。ここにもやはり、儲かりそうとなるとすぐやる。経費だけ掛かって儲からないことはやらない。利用者の利便を図るという観点が抜け落ちている。そういう体質が仄見えます。

 ところで、外賓楼の食堂のことです。これは次の学期に入ってから気が付いたのですが、毎日でっぷり肥った禿げ頭の親爺が来て食事している。大体真ん中の席に一人で座り、時々外賓楼主任の女性が横に座ってサービスしている。敬々恭々。見てすぐ、これはご機嫌を取っているのだと分る態度。「あれ誰?」と留学の日本人に聞いても「偉い人らしい」としか分らない。あるとき中国人の先生と同席したので聞いてみましたら、大学の党書記だとのこと。「ははぁ」と一遍にいろんな事が分った。

 外賓楼と国際文化交流学院は外事処の経営。外事処の幹部もここで食事しています。それはみんなタダらしい。更に他の学院の幹部にも、ここで食事できる予算が割り当てられている。学院長と初めての会談の時にも、後に私の担当になった前副院長との会食の時も、いずれも彼らが伝票にサインするだけで、現金は払わなかった。

 外賓楼の外国人は、言ってみれば外事処のみならず、大学の米びつの一部になっているわけです。それがここの食事が高い理由でした。U主任の「外国人は外賓楼で・・・」というのも、「お金を落として貰わないと・・・」という意味だったのです。
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