22. 日本語の相場
NHK日本語セミナの皆さん
前列左からNHK日本語セミナーH先生、S先生。同修了生Mさん。後列左がH先生の教え子Tさん。
 「日本語の相場」なんて変な題つけましたが、今回は日本語教師の給与と日本語科卒業生の初任給相場はどれくらいか・・・というお話です。タイトルとして長過ぎて収まりがつかないので、思い切って短くした次第。なお、話中の金額は1元13円として換算して下さい。

 確か5月だったと思います。NHK日本語セミナー日本語教師養成講座事務局長H先生が、上海大学に口が決まった講座修了生のMさんを連れて来海されました。Mさんの契約締結のためです。一緒に主任講師のS先生もお出でになった。私に上師大を紹介して下さったのはS先生。面接に付き添って下さったのはH先生。ついでだから私の仕事ぶりも見て行こうということで上師大に寄って下さり、私のクラスで講話もして下さいました。私はNHK養成講座には縁もゆかりもない人間なのに、お二方には大変お世話になっております。上の写真はそのとき外賓楼食堂で撮ったものです。

 この前の日、「Mさんと上海大学との契約に貴方もいらっしゃい」と誘われて、私、H先生達にくっついて行きました。この上海大学ってのは最近幾つかの単科大学、大専が合同してできた大学らしい。当時、中国全土でそういう大学統合化が進んでいました。で、新キャンパスを郊外の宝山区に建設中だった。我々はそこへ向かったのですが、いやそこまでの遠いこと。先生方がお泊まりのTさんの居宅新閘路から実にタクシーで小一時間かかった。行ってみて、周囲が畑ばかりなのに二度ビックリ。本当に何もない。そこにとてつもなく広い敷地を取って、丁度図書館と二、三の校舎が工事中でした。中国って土地だけはふんだんにあるんだなぁ。それが嘘偽り無い実感でしたねぇ。

 相手方のO主任が契約書を持ち出したのにまた驚いた。契約書がある。この当たり前がどうして上師大には無いのだろう?  思わずそう言ったら、「エッ! 上師大には無い?  なら私から電話して上げますよ。主任はUさんでしょ」とO主任が言う。慌てて「いえ、結構です」とお断りした。余所へ行って上師大の悪口を言っていると取られては困る。

 契約の内容は上師大の私の条件と似たり寄ったり。Mさんも月給2,300元くらい。私の方が多いのは授業のコマ数が多いから。上海の大学の日本語教師の給与は表面上その程度ということです。ただし、宿舎がタダで提供される。そして上師大の場合、この宿舎代として大学が6,000元外事処に払っているとU主任から聞いたことがある。すると、私の実質給与は8.000元を超えることになります。

 少し横道に逸れます。私の前任者が辞めた時、U主任がM先生に「専家になって外賓楼に入りませんか?」と言ったことがあるそう。M先生はご主人と暮していますから、専家にはなってもいいが外賓楼に入る気はないと断った。後でこの話を考えてみると、外事処は6,000元の家賃が入らなくなって困った。予算が狂ったわけです。それでU主任に「M先生を外賓楼に入れろ」と言ったのではないか。この6,000元という部屋代は給与に比較しても、家賃の世間相場に比較しても高過ぎます。当時2,500元出せば、外で一般的なマンションを借りられた。外事処は外国人をタネに稼ぐシステムになっている。家賃を払うのは大学=上海市政府。つまりは親方鉄飯碗です。官→官のナァナァ。ですから客観的に見て、ということは外部に2,500元の宿舎を借りるとして、大学の日本人日本語教師の相場は当時、max5,000元相当と見るのが妥当だったのではないでしょうか。

 H先生達が上師大に寄られた後、打ち揃って朝日日本語学校という所に行きました。H先生がTさんを使ってアポイントを取ったらしい。目的はNHK日本語教師養成講座修了生の仕事探しです。そこのクラスでも皆さん講話をなさった。その後事務室で教頭格の人とお話しした。H先生が仕事の口は無いですかと訊ねたら、「日本人教師一人分で中国人教師を二人雇えるんですよ」と返された。すると、当てずっぽうですが、中国人日本語教師の給与は、おそらく週15時間程度働いておよそ2,000元程度なのではないか。

 一方、日本語科の卒業生。学生達に聞いてみると、専科卒で初任給2,000元くらいが相場。本科卒で2,300元だと言う。Tさんに「ウチの学生を一人でもいいから採用して頂戴」と頼んだら、「上師大の専科じゃダメですよ」とニベもなく断られた。Tさんは実は、某日系家電会社の上海法人人事部副部長なんです。「冷たいねぇ」と嫌味を言ってやった。そうしたら、「欠員一人を補充するのに広告出すと300人からの応募があるんですよ。一流大学の本科卒が一杯来ます。専科なんか最初から問題にしません」と鼻息が荒い。「それに新卒取るよりも、既に職歴がある者の方が即戦力になります」という話。言われてみれば一々ご尤もでありました。 
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