26. 採点・不及格
西部公園の池
西部の公園の池。時々ここで釣りをしている人がいた。でも釣れたのを見たことない。そもそも魚がいないんじゃないか。
 試験が終わると採点です。採点それ自体は自分が作った問題ですから、何も難しくはない。けれども、評価、つまり成績の付け方には戸惑いました。相対評価なんです。M先生から「結構やかましいですよ」と聞いていましたので、前もって教務課へ行って確認しておいた。上から優、良、可、及格(合格)と4ランク。日本より一つ多い。そして「優は20%を超えてはならない。良は50%以内」とか、割合が細かく決められている。

 で、実際にそれを当てはめてみて、すぐこれは問題有りと気がついた。1班も2班も試験問題は同じ。けれども出来は違う。2班には90点台がゴロゴロいる。80点台も多い。一方、1班の最高点は89点と、90点にも届かない。するとどういうことが起るか。班毎に評価するので、2班では86点取っても良。ところが1班だと70点台でも優。そういう不公平が生じる。「そんな馬鹿な」と思いますよね。そこでU主任に「1班、2班の垣根を取り払って評価してはいけないのか」と聞いてみた。それはダメだと言う。教務課に提出する成績表は班単位になっている。だから、それは確かにできないんですね。結局のところ、出来のよい学生が揃っている2班の学生は損。出来が悪い1班の学生は得という結果になる。

 相対評価をするのなら本来、班を構成するとき、学力の均等化を図っておかなくてはならない。やかましく言えば、学年毎に成績(この場合は点数)をチェックして、班の編成替えをしておくべきなのです。しかし、ここではそこまでやっていない。物事の仕組みとその運用が、教育の実を上げる方向に向いていないのです。漫然と惰性で動いている。

 困ったと言っても、まだそんなのは序の口。本当に困ったのは落第点(60点未満)の学生。これをどうするか。2班では男子で一人だけ、60点に僅かに足りない学生がいました。それも1課目だけだったので、60点の及格にしてやって終わり。

 問題は1班の方。予想どおり、自室に呼んで警告した学生は3人とも落第点を取った。他に作文でひどい点を取ったのが2人。カンニングした学生のうち「卒業したら霞山会日本語学校へ行くんだ」と言っていた子はもう初めから落第点を取っている。他の2人はカンニングのペナルティーで10点減点すると落第になる。他にも60点に僅かだが届かないのが2、3人。合計すると10人余もいる。いや、頭の痛いことになった。

 そうそう。カンニングと見て辞書を取り上げた学生は4人でしたが、うち1人は辞書に挟んであったメモ書きの紙を試験中広げることはしなかったと主張。私も広げたところは見ていないのでそれを認め、無罪放免とした。ですからカンニング学生は計3人です。

 教務課に提出する成績表に規定が書いてありまして、その中に「本来の点の他に平素の学習態度等を勘案して10点加点できる。ただし、その場合はその理由を明記すること」とある。そこで、不出来の程度が軽い者は「可能な限り」この10点を活用して救うことにしました。ただし、それは落第点取ったのが1課目だけの場合に限ることにした。2課目にわたって落第点を取っている者は、例えその程度個々が軽くても救わない。2課目も落とすという学生は、やはり不勉強と言わざるを得ませんから。

 結局、呼び付けて注意した男子学生のうち1人が3課目全部、1人が2課目落第点なのでそのまま不及格。1人は1課目だけ僅かに足りなかっただけなので救済。霞山会へ行くと言っていた女子の男朋友です。カンニングの3人は10点減点を5点に軽くして2人救済。霞山会の子は2課目落第点取っているので救済せず。

 作文でひどい点を取った学生は45点と39点(ビリ)。これは10点足しても60点に届かない。どうしようもない。この45点の子はかつて3級優等生というのになったことがあるらしい。そこでちょっと可哀想だという気がして、言っても詮無いことだったのですけれど「君は不及格だよ」と前もって通告しました。果たして本人と学習委員が飛んで来た。採点した答案を見せました。納得はしたけれど、何とかしてくれと言う。私は受け付けない。帰ってU主任に訴えたのでしょう。入れ替わりにU主任が来て、何とかしてやってくれと言う。

 そこで私言ってやった。「昨年M先生が不及格にした学生が無事卒業したそうですね。貴方が主任として救ってやったのでしょう?  だから今度も貴方の裁量で救ってやって下さい。私は決められた基準に則って採点し評価した。これ以上はどうしようもありません」。そうしたら、「そんな権限は私には無い」と言う。じゃぁ去年はあったのか? 「ならば副院長か院長に訴えて救済して貰ったらどうですか」と突っぱねた。私は筋が通らないことはしない主義なんだ。
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