27. 卒業式
卒業式
党学校講堂で卒業式。これは最後に歌を歌っているところ。聞いたことのない歌でした。
 U主任は帰りしなに「教員出身じゃない貴方を採用してやったのに」と、また恨めしそうに言った。少しは有り難いと思え。或いは、少しは言うことを聞けと言いたいのでしょう。でも、教員出身者なら問題はないの? この人はそういう考えだから事の本質を見抜けない。

 私に言わせると、1課目でも落としたら卒業できないなんて制度は欠陥制度です。卒業には何単位必要と定め、その上でその最低単位を上回る授業を履修させないと、必ずこういう事態に至る。何も今回が初めての卒業試験ではない。今までに何回もそういう例があったはず。その度に姑息な手段で卒業させるっていうのは問題だ。これは根本的に考え直さないといけない・・・と、そういう方向に頭が行かないということが私には到底理解できない。
 
 話は少し飛びます。最初の頃は私、専科って3年課程なのだと信じていました。 余所の単科の○○学院というのは、大体が専門学校で3年課程でしたから。ところが次年度に入り、華東師範大学専科や私立三達大学から何人かが新設の上師大本科に入って来た。聞いてみると、華東師範大学では専科は2年で卒業だとのこと。すると何で上師大は3年課程だったのだろう。学生に訊ねたら「商売でしょう」という答えだった。なるほど。それもあるかも知れない。しかし、もう一つの原因は教師不足にあったのではないか。一定の課目を2年で終わらせるには、3年で終わらせるよりも教師が余計必要です。

 教師陣を見渡すと、まず主任の前身が電気関係のメカニック。他には元小学校の先生だとか、滞日8年の経験者。どちらも日本語が上手だというだけで雇われている。そういう陣容では課目を増やそうにも、会話程度なら兎も角、ちょっと専門的な課目になったら対応不可能です。だから2年課程にできなかったということは大いに考えられる。

 けれどもそれは飽くまでも初期段階の話であって、私が赴任したときには既に日本の国立大学で修士課程を終えてきた人、華東師範大学で修士課程を終えてきた人、更には日本民俗学博物館で博士号を取ってきた人がいらした。そしてその方たちは皆、経歴から言ったら半端なクラスを持たされて、大層不満を感じていらした。だからその気にさえなれば、課目を増やせないということはなかったはず。

 要するに、ここにはいろいろ問題がある。それは何故なのか。この日本語科創設の際、力のある人を連れてきて中心に座らせる。そういう才覚がある人が大学にいなかった。それが今日のこういう状態を招いている。私はそう見ていました。学風というものは最初に中心になった人によって自然に形成される。ここは人を得なかった。すべてはその一言で説明できます。
 
 で、結果はどうなったか。最後はU主任が何とかするだろうという予想は外れ、私が不及格にした学生はそのまま卒業延期になった。これには私の方がビックリ。昨年は彼が後からどうにかして卒業させた。どうして今度はそれをしなかったのか。それがよく分らない。M先生は女性。だから甘く見た。私はU主任の頭越しに学院長に会見を要求したし、彼とも副院長とも直接communicationが取れる。こいつは甘く見られない。後で問題にされたら困る。そう考えたのでしょう、きっと。
卒業を喜ぶ学生達
 さて、卒業式は大学隣の上海市共産党委員会党学校講堂で行われました。党学校といっても大学並みの施設です。いや学長の挨拶の長かったこと。小1時間は話した。20分くらいで学生達が私語を始め、30分を過ぎたらもう騒然として学長の声が聞えないくらいになった。それでも学長は話を止めない。
 私が思うに、偉い人は長い話ができないとその地位に相応しくない。そう考えているのではないか。全人代で党主席や首相が2時間も3時間も話す。それを真似しているのでしょう。

 もう一つ驚いたこと。各学科の代表が卒業証書を貰いに壇上に上がります。私は成績最優秀者が代表になるものだとばかり思っていた。ところが別の子が上がった。「何で?」と横にいた学生に聞きましたら「彼女は学年中の党員で最古参だから」という答。「ハハァ。やっぱり中国だなぁ」。その子が優秀じゃないということではありませんよ。彼女も出来る子だけれど、もっと優秀な学生がいる。でも、ここでは学業成績より党歴優先なんですね。

 何故か卒業延期になった学生達も来ていました。正直な話、悲しそうな顔を見るのは辛かったです。でも、一番気になった作文で45点取ったかつての3級優等生。これはこの後の夏休み明けに聞いた話ですが、その子は上海大学本科に転入した。これは不幸中の幸い。かえってその方が良かったかも知れない。幾らか気が楽になりました。

 私にも一つ反省すべき点が。作文の試験に「語順並べ替え」の問題を出した。それは何故かと言うと、中国では暗記中心の勉強をします。試験前になると公園や校舎の裏などに何人もの学生が本を持って立ち、声を出して読みながら暗記している。それなら暗記で出来る問題を出そう。そう考えたのです。しかし、語順並べ替え問題は、一つ間違えるとその後が全部ペケになる。ということは、長い文だと大量失点につながる。私の出した文はそんなに長くはありませんでしたけれど、その学生はそこでの失点が大きかった。他の所も悪かったのですが、それがなければ下駄の10点で救えたと思う。今後は私、語順問題は出すまいと決めています。そういう機会はもう来ないでしょうが。
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