11.中級班開講 第一回の授業 第一回授業風景

 9月7日(月)午後7時、中級クラスの授業を開講。教室は事務所ビルの1階会議室。外はまだ明るい。暑いから据付けのエアコンをつける。銘板を見たら東芝製でした。

 まずO先生、次いでSさんが挨拶する。挨拶というより訓示の感じ。O先生は簡潔だがSさんは長い。一体何をしゃべっているのだろう。生徒はシンと静まり返っている。続いて、R氏が特別ゲストですと紹介したXiさんという男性が挨拶。昔一緒に日本語を勉強したR氏の古い友人だそう。この人とはこの後親しくなりました。とても愉快な人。

 やっと挨拶が終わって、まず私が自己紹介。黒板に名前を書き、ついでに年齢も書いたら皆、オーッとどよめく。そんな年には見えないということらしい。日本ではお若いですねと言われたとき、「馬鹿ですから若く見えるんです」と答えることにしている。中国語ではそういうのを何と言うか知らないから言えない。尤も知っていても言わない。これから教わる先生が馬鹿だと知ったら、みんながっかりするに決まっている。ところで、授業には最初の1か月だけ通訳が付くことになりました。中級はR氏で、初級はL氏が担当する。

 名簿を元にR氏が生徒の名前を読み上げ、今後の名前の呼び方を協議して決める。決めたら自己紹介させる。最初は黄(ホァン)。コウさんとしたが、これは後で困った。洪というのが出てきた。どちらも男だから、「男のコウさん。女のコウさん」というわけにはいかない。更に呉というのがいて、これは後日の話ですが、私が「呉さん」と呼ぶと他の二人も反応する。その反対もある。こちらは「ゴ」と言っているつもり。けれども連中の耳には「コ」または「コウ」と聞こえるらしい。中国語には有気音、無気音というのがあって日本人にとっては同じ音でも、彼らは僅かに息を吐くか吐かないかで違う音と弁別する。その関係かもしれない。いずれにせよこれには困りました。

  その黄さんの自己紹介。「ワダシノカイシャワ○○。ニホンドシカイシャデス」。名簿の勤務先欄はJ市○○電子有限公司となっているから「○○」は分かる。「ドシ」が分からない。聞き直してもやはり分からないから黒板に書かせたところ、独資と書く。合弁ではない。日本の会社だと言いたいわけです。それはいいのだけれど、彼の発音では「ドクシ」とは聞こえない。またドクシと聞こえたところで、すぐ独資と漢字が浮かびません。「ドクシはやめて日本の会社と言いなさい」と言ってやった。もう一つ、変な所で濁音が出る。これは他の生徒にも共通します。この清・濁音の混乱については、どういう場合に出るのか法則性を突き止めたいと考えていながら、遂に果たせないまま帰国しました。ともあれ○○は日本の会社で彼はそこの係長。仕事は設計だという26歳の独身。参加の動機は、仕事上日本語が必要だということでした。

 以下全員を簡単に紹介します。

  呼び 性別 年齢 工作単位 学歴 日本語水平
1 ホアン 26 電子公司 無線電学校 標準日本語初級
2 モウ 27 郵電局 師範大学 自学
3 トウ 28 製紙庁 技工学校 日本研修2年
4 茅  カヤ 28 調味品公司 糧食学校 標準日本語初級
5 32 調味品公司 標準日本語初級
6 シャ 29 調味品公司 J市八中  標準日本語初級
7 時  トキ 32 調味品公司 軽工業学院 標準日本語初級
8 カク 33 教師 師範大学 学過1年
9 セツ 23 外貿公司 商学院 標準日本語初級
10 パク 32 電脳公司 大学 中学高校学過
11 チョウ 30 経済開発区 高専  標準日本語初級
12 19 街路灯管理処 技工学校   標準日本語初級
13 コウ 22 鉄路管理局 大専 自学
14 李  28 補読学校 中師  標準日本語初級
15 27 貨品集団    師範大学 標準日本語初級

  やはり外国語は習うより馴れろですね。3の童は滞日経験あり。5の胡は合弁会社の運転手。日頃日本人と話す機会が多い。10の朴は中、高のとき日本語の授業があった。この3人は他の連中より頭一つ二つ抜け出ている感じ。

 経歴紹介の「学過」というのは過去に学んだという意味。「標準日本語」というのは中国で大変ポピュラーなテキストです。文法は学校文法。テープが付いていないのが弱点。

 ところで、戦後の中国派遣日本留学生の選抜試験では、いつも朝鮮族が上位を占めた。初めはどうしてか分からなかった。そのうちに朝鮮語と日本語は文法が酷似しているせいだと気がついた。以来朝鮮族の受験者にはハンデをつけ、やっと漢族の受験者が上位に入るようになった・・・と聞いたことがあります。で、朴さんに、その日本語の授業というのは日本留学準備のためかと聞いてみましたが、本人は何のためか知らないと言う。片方では反日教育を施しながら、一方では日本語の学習が許容されていたというのが甚だ不思議ですね。

 ともあれ全部で15名。人数も適正。うまい下手はあるけれど、概ね何とか分かる日本語で自己紹介ができる。この分なら何とかなりそうです。

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