45. 落ち穂拾い-2  2. 省級・市級  日本だと文化財に相当する文物保護単位というものがあります。分かり易く言えばお寺など歴史的建造物の類です。これにはランクがあって国家級、省級、市級となっている。国家級は中央政府が、その選に洩れた物を省が・・・、と順に決めていくのでしょう。で、そのランクは当該保護物件に石板または金属板で表示されています。
 それについて何か言おうとしているのではありません。日本でも例えば公園に国立公園、県立公園とランクがある。あれと同じことですから別に問題はない。よく分からないのはホテルのこと。J市のホテルに省級と市級、それ以下のホテルとランクがあった。そのランクは誰が決めるのか。実はこれ、公的な基準ではなく、R氏なんかが勝手にそう言うんです。

 市の郊外に生徒の欒がマネージャーをしているホテルがあった。私は一度遠出をしたときに前を通って、「ああこれがそうか」と眺めただけ。随分不便な所にある。そこは省が経営している。だから省級だ・・・と言うんです。省級だと何か違うの? とR氏に聞いた。「J市の公安は踏み込めないんです」と言う。エッ! 何それ? 公安って警察のことです。警察が踏み込めない場所があるなんて聞いたら、誰だって驚きますよね。

 中国では結婚していない男女が一緒にホテルに泊まってはならないことになっている。最近はルーズになってきているようですが、以前は結婚していることを証明する書類を提示しないと、ホテルも男女を一室に泊めなかった。公安は随時ホテルを臨検する権限をもっているらしい。ところが、ここが不思議なんですが、省が経営しているホテルに市の公安は踏み込まないと言うんです。「だから先生。誰か連れ込むときはあのホテルなら大丈夫ですよ」なんて言う。私はそんなことしない。したいのはR氏。

 R氏は非常に如才ない人。国際文化交流協会なるところに大金を払って騙されたK先生のことは前に書きました。このK先生が私やR氏と親しくなるや、R氏は忽ちK先生の為に一肌脱いだ。日中合弁のソフト会社で日本語教えるだけじゃ大した金にならない。夜は空いているんだからホテルで従業員に日本語教えたらどうですか? と言って、市中心部にある新しいホテルにK先生を売り込んだのです。そのホテルにはコネも何もない。でもサッサと入って行って話をつけちゃった。教師として売り込むについて、K先生の部屋も一つ獲得しました。朝晩の食事付きでタダです。そういう交渉力は大したモノ。舌を巻きました。

 何しろ自分の交渉力で獲得した部屋。そして街の中心ですから便利。だからR氏は恰も自分の部屋のように入り浸り。入ったばかりのとき、「先生。いやここは凄いですよ。初めて部屋に入ったら即、<いい子がいますよ>と電話が掛かってきました」と。「いいよ、要らないよと言ったら<見るだけ>と言って何人も女の子連れてきましたよ。いやぁ、出前付きですよ」と言う。ホテル内にそういう商売の人間が常駐しているということです。そこで私、「公安はここにそういうのが入り込んでいるのを知らないのかな?」と聞いてみた。知らない筈はないと私は思う。それに対して彼の言うには、このJ市はもう一つパッとしない。市にお客が来なければホテルは儲からない。儲からなければ税収も上がらない。公安があまりうるさいことを言うとお客が来ませんからね。だから、見て見ぬ振りをしているんじゃないですか・・・と言う。

 前に湘南国際交流会の方たちがこのホテルに泊り、パスポートと現金を盗まれた話をしました。絶対ホテルに犯罪者と結託している人間がいた筈です。でなければ、日本人の泊った部屋だけが留守の間に荒らされるわけがない。ならば公安は、日頃の行状などから内通者を逮捕できそうなものだと私は考えます。でも結局犯人は捕まらなかったらしい。何の証拠もありませんが、中国の公安(警察)の能力、規律についてはかなり問題がある。私はそう感じています。尤も日本の検察も、例えば金丸信の脱税について軽い罰金だけで済ませて、世論の批判を浴びました。余所のことばかり言えない。日本にも襟を正すべき点は多々ありそうです。
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