47. 落ち穂拾い-4  4. 離婚  最近の日本は離婚が多い。事の深刻 さをcaricaturizeしようということか×1、×2などと軽く言う。相性というものは確かにある。合わないものを一生我慢するのは大きなマイナス。ならばいっそのこと・・・と別れるのも理屈の上で分からないことはない。しかし、世の中ってそもそも我慢し折れ合うものなんじゃないか。そんなに簡単に別れちゃっていいの?  

 中国では離婚なんて少ないんじゃないか。漠然とそう考えていました。それが行ってみたらそうでもない。結構あるんです。まずお目に掛かった第一号がXiさん。最初の授業の時にR氏の古い友人として挨拶した人です。息子が一人いてXiさんが養育していました。離婚の原因は何だったのか聞いたような気もしますが、それはもう忘れました。本人の側に問題があった場合は、だいたい本当のことは言わない。私の見るところでは、Xi氏の方に原因があったろうと思います。サイパンへ出稼ぎ団の団長として行って問題を起した。おそらくそれが原因でしょう。

 このXiさんは「私は降参党員です」なんて自分から言うくらいですから、ユーモアを解する面白い人でした。無職。日中は証券会社に日参して株をやっていた。「成績はどうですか?」と聞くと「まぁまぁです」とか「このところ動きが無くて・・」という風な返事が多かった。多分儲からなかったんだと思う。私の滞在終期の頃にはAmwayというネズミ講のセールスになっていました。

 二番目が初級で一番優秀だった生徒のYです。この人は一人息子を亭主の方に渡さなかったんですね。自分で養育していました。亭主は軍人だった。離婚したときか離婚前かは知りませんが、亭主は軍人を辞めてシンセンの方へ働きに行き、そのままそちらに居着いている。離婚の原因は亭主の母親。本人同士は互いに気に入っていたとYは言う。ところが亭主の母親がYを毛嫌いしたらしい。ここのところはYはハッキリ言わない。「相手の母親がムニャムニャ」とよく分からない言い方だった。でも前に書きましたように、Yには露骨に人を馬鹿にする欠点がある。そういうところが嫌われたのでしょうね。亭主は母親に逆らえなかった。日本でもあるケースです。で、この元夫婦は時々互いに行ったり来たりして会っていた。「先生。明日シンセンに行きます」。何なの? 「彼に会うんです」。すぐ帰って来る。お義理に楽しかった?と聞くと、「彼は軍人で鍛えているからとーても素敵なんですよ」なんてアケスケな惚気を言う。

 そんなことを言うくらいですから、やっぱり孤閨を守るのは辛かったのでしょう。私が帰国してから、風の便りに「新しい男が出来たらしい。大きなお腹で歩いている」と聞きました。

 三番目。これも生徒。中級に歌が抜群にうまい(という)女性がいた。授業のとき「歌って頂戴」と言っても、どういうわけか頑として歌ってくれなかった。この人の亭主がアメリカへ出稼ぎに行った。確かサイパンです。サイパンにはこの市または市の誰かが何かコネを持っていたのでしょうね。私のクラスには関係ありませんが、他にもサイパンへ行ったり来たりしている人がいましたから。で、亭主の留守にこの生徒が浮気をしたらしい。正確にはどうも周りが誘惑したようです。それが亭主の耳に入った。亭主はこっそり帰って来て現場を抑え、「この淫婦め」と追い出しちゃったらしい。私の滞在終期の頃は実家が狭いので姉妹の所などを転々と泊まり歩いているという噂でした。しかしこのケースは、私はその生徒が可哀想と思います。亭主にも一半の責任がありますよ。

 このように、私の周囲だけでこれだけ離婚者がいた。R氏に聞くと「中国は多いですよ」と言う。多い理由はまず、男女共働きが多い。女性に(少ないとしても)収入がある。自立し易いのです。第二に、中国では私有財産が無い。だから財産分与の問題がない。日本には私有財産がありますから、離婚というと大抵これで揉める。その点が違う。尤も私有財産がないと言っても、住宅の居住権がある。中国の住宅というものは、まことに分かり難い。以下にそのことを説明します。

 具体的に行きましょう。まずXi氏。彼の父親はJ氏の副市長だった。それで、市庁舎の対面のお役人の官舎街(6階建てくらいの公団風建物ですが)の一角に住んでいた。日本だと退職すると同時に官舎は出て行く。中国ではここが不思議なんですが、退職してもそのまま住んでいられる。既得権なんですね。その父親が亡くなったら、Xiさんは市政府と縁もゆかりもないわけですから、その住宅を出なくちゃいけないかというとそうではない。そのまま住んでいる。ここでどなたもお気付きと思いますが、本来そこは市のお役人用に作った建物。それが何十年か経つと、跡継ぎが市政府に就職しない限り、住人はみんな市政府に無関係の人ばかりになるわけです。新しく市に就職した人の住宅はどうなるのか?  それを聞いておくべきでしたが、聞くのを忘れました。

 第二のYの場合。彼女は前夫の官舎に住んでいた。軍の施設です。前夫が居住権を彼女に渡したのでしょう。周りはおそらく軍関係者ばかりではなかったか。私、一度招かれて行ったことがある。軍の施設ですから門があり、入るときYが一緒でしたから顔パスで入りましたが、もし私一人なら申告しなければならない。そこで疑問に思うこと。ここもXi氏の住宅と同じように将来、住人が軍に無関係の人ばかりになってしまったら、門に兵士が立つ理由は成り立ちませんよね。そうしたらどうするんだろう?  幾ら考えても分かりません。考え出すと眠れなくなるから考えないことにしている。

 第三の歌のうまい生徒の場合。住まいは前夫に権利があったのか、離婚原因が彼女の不貞ということで彼女が追い出されてしまった。ですから住宅にまつわる問題は無い。

 最近、中国も私有財産を認めるようになりました。今、個人が盛んに住宅を買っています。これからは両者話し合いの離婚となると、それをどうするかで揉めることが多くなるのではないでしょうか。
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