10. バンコック−2
カタビーチのサンセット
 カタビーチの日没。

<5月4日> 
 
朝9時、ホテルが予約してくれたトクトクが迎えに来る。ゴルフ場まで送迎で300
B。このトクトクはバンコクのそれと異なり、ダイハツ軽トラックに屋根とベンチを付けたもの。ゴルフ場は日本並に整備されている。日本人だけで1パーティ組んであった。パートナーはシンガポール駐在6年という若者2人。奈良から遊びに来たという土建屋の親父。若者達は自分のクラブ持参。土建屋は私同様借りクラブ。「関空からなら近いんだから、クラブ持って来られればよかったのに」と私。「いやもう、あそこは通行料から利用税から無茶苦茶高うてそんなことできまへん」と土建屋。なんでも「空港利用税が高すぎる」と言って負担を拒絶する外国人出国者がたくさんいる。仕方がないから、未払いでも通しているのだと。そうしないと飛行機が飛べないから。フーン。ホナ、わいも一遍やったろかい。

 プレイの方は最初はダメだったが、3ホールくらいでクラブに慣れ、パーが出始める。パーを取るとキャディーが、「1回につき50Bチップくれ」と言う。阿呆らし。バーディーやイーグルならいざ知らず、多寡がパーくらいでチップ取られたらワイは破産するわい。「おっさん、知ってる人がおらんからいうて、嘘ついたらあきまへんでぇ」。ハイ、済みません。ともあれ、調子が出てきたのにやる気が失せる。

 土建屋の親父、「昨夜は朝の3時まで女の子4、5人と飲んで7千円でっせ。ここは天国でんなぁ」と言う。パトンに泊まっているとか。こちら7千円より、朝の3時までに驚きますわ、ホンマ。そんな時間までよう飲んでおられますなぁ。無茶苦茶暑い。腹の心配は後回し。ミネラルウォーターやらジュースやら、ざっと5〜6本は飲んだろう。

 ホテルに帰ってビーチに行く。オフシーズンに向かい人が少ない。それでもトップレスがチラホラ。やっぱりカッコいい。陽が傾くのを待ち、夕焼けの写真を撮る。帰りがけ、マーケットでお土産にアイスクリームを3コ買う。1コ25Bは高い。姉妹と雑談しながら食べる。「日本人の客が泊まることは?」。「日本人はみんなメッドクラブに泊まる。うちでは珍しい」と。「いちばん長期の滞在客は?」。「65才の引退イギリス人。4カ月居た」。「4カ月も何してた?」。「swimingと読書」。ウーンと唸っていると、「日本人は何故休暇が短いか?」ときた。「長く休むと昇進や商売に差し障りがある」。「日本人働きすぎ。もっと休むべきだ」。若者が聞いたら喜びそうなことを言う。 お別れに私がドリアンを買うから、夜一緒に食べないかと提案。7時に約束。時間に行ったら買ってあって、金はいらないと言う。アイスクリームのお返しだと。お互いの家族のことなど話す。彼女達は子供はいないという。独身か?

  明朝の空港への足の相談をする。タクシーかトクトクか、ローカルバスの三通りある由。面白そうなのでローカルバスを選ぶ。それだと朝6時出発だ。彼女達は通いなので、再び彼女達と顔を合わせることはない。停留所の場所その他心得事項を聞き、勘定を払い、握手して別れる。

  <5月5日>
  6時前にバス停へ。6時5分、バスが来る。乗り込むと運転手、「10 minutes」と言って近くの茶店へ消えた。6時15分発車という意味だろう。ホテルでもそう言っていた。しかし時間になっても現れない。6時25分、少し小さいバスが到着。もっと奥地へ行くバスか?  すると消えた運転手が出てきて、後着の運転手と口論が始まる。後着は腕時計をしきりに指している。遅れていると注意しているのだろう。先着はふてぶてしく言い返している。やがてバスに乗り込み、6時35分、走りだした。

 ところが驚いたことにギアはローに入れっぱなしで走る。ノロノロ運転だ。このおっさん少し頭おかしい。それでも所々で客を拾う。やがてまた、さっきのバスと同型の車が路傍に待機しているのが見える。こちらがその横に停止するやまた口論が始まった。小型の方の運転手が時計を指して何か言っている。こちらが言い返す。やっぱりこいつは問題運転手なんだな。いい加減なところで口論切り上げ。また走り出す。プーケットタウンが近づいたら急にスピードを上げ始めた。今度は路傍で客が手を上げても停まらない。唖然、呆然とする顔を尻目に平然と走る。日本だったらこんな運転手は即クビだよな。

  プーケットタウンがこのバスの終点。ここからはタイ航空のリムジンバスに乗る。タイ航空事務所の入口で中から出てきた車と鉢合わせ。運転手が「何の用?」。「リムジンに乗る」。「リムジンはこれだ」と言うので、そうかと乗り込む。客は私一人。暫く走って、「アッ! リムジンはリムジンでも、これはタクシーだ」と気がつく。高いのだ。オレはどうも出会い頭に弱いなぁ。でも今更戻れとも言えない。諦める。

 車はタイ製のコロナの新車。完全舗装の道を快調に走る。周囲の景色も美しい。ネパールとはえらい違い。空港に着き、300B請求される。200Bにしろと一応言ってみる。運転手ポケットから領収書の綴を出して見せ、ダメだと言う。当方そこには300Bと書いてあると思いこみ、金を払う。すると運転手、金も領収書綴もしまい込み、「カウンターはあちら」と指さして行ってしまう。野郎、猫ババしたに違いない。悪い奴だ。タイは最近発展してきてそこそこ自信を持ち始めたようだが、こういう人間がいるうちは少なくとも尊敬される国にはなるまいよ。「おっさん、偉そうなこと言いなさんな!  日本も最近おかしいでぇ!」。ホンマ、そうやなぁ。

  やっと腹は止まったようだ。昨夜のドリアンが効いたのか。サンドイッチとコーヒーで朝食。売店の女は売ってやると言わんばかりの無愛想。タイの空港で買い物したり、食事するものではない。腹が立つ。そこへいくとフィリピンは愛想がいいぞ。見習え!定刻を1時間近く遅れて離陸。

  何事もなく1時間でバンコク着。 タクシーを拾い、定宿のプリンスホテルへ。いつものことだが「プリンス」と言っても分からない。”一流ホテルではないから知らない”ということもあるだろうが、もう一つ「イ」か「ン」の音が聞き取れないらしい。ときに「プリース?」と聞かれたりする。仕方がないから、最近はホテルカードを用意して、それを見せることにしている。見せたらスンナリ行った。

  シャワーを浴びて13時。早速、ワットポーのタイ式マッサージに畳まれに行くべく、ホテルを出て教わったエアコン12番のバス停に向かう。前方でタクシーが停まり、女が1人降りた。私の行く方向へ歩いて行く。なんとなく後ろ姿がごつい。歩道橋の袂、道幅が狭くなっている所でクルリとこちらに向き直る。オカマだ。去年の奴に似ている。向こうも一瞬、アレッというような表情を見せる。こちらの手に手をかけて何か言うが、それにかまわず進む。追っては来なかった。

 去年は朝だった。ホテルの近くを散歩していたら公衆電話BOXから出てきて、オレに時間を聞いた。そして「日本の方ですか。コーヒーでもいかが?」とぬかしたんだ。「結構」とそのまま歩くのに、暫く追いかけて来たっけ。この辺りが奴の稼ぎ場なんだな。それにしても、あんなのに引っかかるのがいるのかなぁ。
 <オカマの手口>1.タクシーでカモを探す。2.見つけたら先回りして待ち伏せ。少しでも人目から陰になる場所を選ぶ。3.狙いはおそらく睡眠薬強盗。

ワットポーの涅槃仏
  ワットポーのマッサージは昨年に続き2回目。前回は気がつかなかったが、入口上に「massage school」とある。学校なんだ。1時間180B。初めてのタイ旅行のとき、チェンマイのホテルで経験した、柔道の業みたいな強烈なマッサージに比べると物足りない。しかし反面、チップなど要求しない。良心的。ここは黄金の涅槃仏で有名なお寺。それは前回見物済みなので、マッサージが終わればもう用はない。サッサと出る。
(左写真
涅槃佛の足)。(写真右下:寝ているのは私)
 若者が集まるというサイアム・スクエァに行きたいと思い、王宮横の交差点で立っていた警官にバス停を聞く。全く通じない。何を言っても目を白黒させるだけ。仕方がない。地球の歩き方のマップを広げ、バス路線をエアコン付き8番と読み取る。タイのバスにはエアコン付きと、エアコンなしの2種類があるのだ。すると横にトクトク(オート三輪車)が止まり、若い運転手が「ここは王宮」、「あちらがワットポー」と一方的に説明する。警官に質問しているのを見ていたのだろう。私、「知っている」と手で払う仕草をする。それでも「どこに行きたいのか」。
タイマッサージ

  私、「トクトクは必要ない」と再度、手で追う。すると運転手、車から降りて来て「僕は学生。親切に言ってやっているのに失礼だ」と息まく。「道を覚えようとしているんで、車には乗りたくないんだよ」と言う。分かったのか分からないのか、膨れっ面で車に戻り行ってしまう。「サイアムスクエアに行く」と言えば、「乗れ」と言うに決まっている。百歩譲って本当に親切心からだとしても、それはこちらには見分けがつかない。

 うだるような暑さの中を8番バスが通る道まで、汗を拭き拭きテクテク歩く。ここと思われるバス停に到着し、8番のバスを待つ。なかなか来ない。やっと来たのに乗り込み「サイアムスクエァ」と言うに、運転手「?」。再度言う。すると運転手振り返って、乗客に何か言う。乗客誰も反応せず。「いいから行け」と発車させる。暫く走ると、大きな交差点でサイアムスクエァとは違う方へ曲がった。こりゃあ違う。停車させて金を差し出すが、運転手いらないと言う。そこで降り、バスは諦めタクシーに切り替え。地球の歩き方の交通マップは信頼できない。結果、バスなら6Bくらいのところを80Bかかった。 

 サイアムスクエア。一回り見て歩き、東急4Fの日本料理屋で食事をする。寿司、そば、洋食い
ろいろあるが、とにかく米が食べたい。小旗を立てたらそのままお子様ランチのチキンライスにする。90B。ウエイトレスはみんな着物。日本人とは体型が違うからだろう、ゾロッとした感じで印象悪し。やり過ぎだ。何でも日本風にすれば良いってもんじゃないよ。日本人だか韓国人だか分からん男が、隣の席からこちらをジロジロ見る。当方、サファリベストにジーパン。確かにカジュアルではないが、「何が悪い」と睨み返してやる。チキンライスは少しベトついていたがうまかった。これでますます外地適応力に疑問符がつく。

 同じ4Fの食品売り場でドリアンを探すが売っていない。食品売り場は日本なら地下だが、このデパートにはその地下フロアがない。ここは低地。洪水が怖いのではないか。外へ出ると若者が指を立てて、東急から出て来る人に向かい何か言っている。ヘルメットを被っている。ああ、噂に聞くバイクタクシーだ。試しに乗ってみよう。「プラトゥーナムマーケット」。「30B」。途中、大きい交差点で1回停まっただけ。車の間を縫って疾駆し、すぐに着いた。30Bは高かったかも知れない。マーケットではドリアンの下見。大体10B、20B、35Bと3ランクあるようだ。1キロ当たりの値段らしい。中身だけのも売っている。一つ買って食べる。20B。これで少しは体力も回復するだろう。最初に乗ったバスでホテルへ。6B。 

ドリアン売り
<5月6日>
 
ホテル前からバスでプラトゥーナムマーケットへ。予めチャック付きの買い物袋を買い、一番い
い場所でドリアン売ってるおばはんに「日本に持ち帰るんだから上物をくれ。2コ買うから負けてな」と言う。ウンウンとうなずく。2コ200B。「discountは?」と言っても知らん顔している。さっきはうなずいたのに今度は分からないフリするんだからずるい。袋に入れて、またバスでホテルに帰る。

 正午、支度を整えチェックアウトへ。エレベーターの中でドリアンが匂う。これはやばいかな? と弱気になる。念のためと思い、キャッシャーに「飛行機に持ち込めるだろうか?」と聞いてみる。「いやそれは絶対ダメだ」と、周りの連中も口を揃えて言う。これが日本へ直行なら強行してもいいんだが、香港経由だからまだ乗換があり日数がある。持ち帰りは無理と判断。ホテルの連中に「なら上げる」と言うと、みんな歓声をあげて喜ぶ。勘定(660B)済ませて外へ出ようとしたら、ボーイが早くも割って皿に載せて来るのとすれ違う。仕事はノロノロしているのに、こういうときは素早いんだ。いまいましいから「俺にも食わせろ」と言う。さすがに礼儀は弁えていて、「好きなだけ取ってくれ」と差し出す。少し取って食堂で食べていると、支配人がやって来て、「持ち帰るならデパートで中身だけ買い、箱に入れてシールして貰え」と言う。訛が強いんで、それだけ理解するのがやっと。なるほどとは思うものの、もう時間がない。無念の想いを殺してタクシーに乗る。

 機中、隣席は中国人おばはん。質素な身なり。「香港人?台湾人?」と問うに、「中国」と言う。ハテな? 当方のパスポートを差し出し、紙片に「請看 的護照」と書く。出されたパスポート、紛れもない中華人民共和国のもの。福建省アモイの陳さん。芳紀まさに50才。筆談に移る。「貴殿万元戸なりや?」。笑って「然らず。息子が万元戸なり。息子は海老の商人なり」。今度は向こうが「貴殿中国字をよく知るなり」。「我学習中文一年」。「ほうほう」と感心してくれる。が、ときどき分からない字が出てくる。簡体字だからだ。向こうはこちらの繁体字が分からない。だからお互い理解率80%くらいか。

ときどき、プーンとドリアンの匂いがする。先刻まで同じ袋に入れてあったサンダルに匂いが付いたんだ。誰か「臭い!」と言い出さないかと、気が気でない。 機内販売が始まった。おばはん、やおらカタログを取り、洋酒を指して「幾らか」と私に問う。香港の友人にお土産にするらしい。ドル表示を指すと「中国」と言う。ああ、中国元プライスか。日経新聞マンデー版から切りとった、最新各国為替レート表と電卓で換算。「ホラ」と見せる。洋酒は一発で断念したらしい。次は化粧品。口紅を指す。また換算。今度は適当と判断したようだ。売り子が来るのを待つ様子。こんなの香港にはゴマンとあるのに、知らないのかなぁ。適切な表現を思いつかず、やむを得ずカタログを指しながら、「香港多々」と書く。分かったらしいが今度は、「香港より安いか?」と来た。「我不知道」。でもかわいそうだから、スチュワーデスを呼んで直接聞かせる。乗っている飛行機は中華航空。通訳する必要はない。でもスチュワーデス、聞かれた途端に困った顔をする。そらそうだ。自分の方が高いとは言えないもんな。顔を赤らめながら「もちろん機内の方が安い」と言う。おばはん、納得顔で1コ買った。そんなことで結構気が紛れ、時間がたち、on time で香港着。

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