11. 香 港
着陸前
香港啓徳空港に着陸寸前の眺め。もう少し降りると洗濯物の柄までハッキリ見える。

 5.香港    (5/6〜5/8)    1HKドル=11.5円
  友人(SO・KA夫妻)にYMCAを予約して貰ってあったが、前から興味があった彼の有名なCHUNG KING MANSION(重慶大厦)に泊まることにする。バックパッカーの巣。日本で言えば、山谷のドヤ街の高層版。魔窟九竜城が無くなったので、第二の九竜城という人もいる。しかし、場所はチムシャッツイのど真ん中。ロケーションは最高。夫妻につきあってもらい、上の方から6軒くらい回って決めたのが「新亜賓館 BLOCK A, 8/F, A7 36-44 NATHAN RD.KLN.Tel 7240426 7232579、FAX 852-721 3855」。バス、シャワー、AC、TV付き、で180HKドル。日本流にいうと全部で3畳くらいのスペースか。交渉の相手は50代のおかみ。「日本人は歓迎だからぜひウチにして」。ニコニコと愛想がいい。しかし、SO君が値切っても頑として受け付けない。その代わり、ACの電気代をタダにすると言う。それで手を打つ。金を払った途端にクールな表情に戻る。その変化があまりにも鮮やか。それがかえって面白い。

 日本人歓迎は他のゲストハウスでも言われた。日本人は部屋をきれいに使い、マナーもよいからだそうだ。住み心地は案外快適だが、万が一火事が出たらアウトだろうな。エレベーターが建物の大きさに比べて小さい。定員7人。しかし大男が2人も乗れば、5人でもブザーが鳴る。16階建てだから、1回で乗れないと次までの待ち時間が長いのが欠点。エレベーターの中は人種の坩堝。ちょっと薄気味悪い。  SO君の話では、回った6軒の経営者の殆どが上海人だったと。言葉で分かるらしい。ちなみに、SO君は客家(はっか)人である。

  <5月7日>
 上水で夫妻と落ち合い、深せんに向かう。羅湖で電車を降りるとみんな走る。イミグレーショ
ンに忽ち長蛇の列。深せんの方が物価が安いので、買い物に行く連中だと。こちら外国人なので、イミグレーションの前にビザ交付所へ。先客は幸い、ガイド同伴の日本人二人連れだけ。85HKドル。中国人役人、パスポートを投げてよこす。印象極めて悪し。 イミグレーションをやっと通過して中国領に入ると汚い。乞食がいる。子どもが「金くれ」とつきまとってしつこい。KA君が「カメラを向けると逃げる」と言うから、試してみる。すぐ逃げるのと逃げないのといる。逃げないのは鬼ごっこのつもりか、「キャッキャッ」と笑う。でも一様に顔は隠す。孫の顔が浮かび、金を与えようかと一瞬思うが、”いやこれは中国の問題だ”と思いとどまる。人民共和国と名乗るからには、彼らが自ら解決すべきだろう。

深せん市内
 建物は大きく新築なのに、街全体が殺風景でアンバランス。日曜日なのにそれほど人出は多くない。香港並にきれいなブティツクなどもあるが、ファッションがワンパターンという感じ。道路は広いが車がビュンビュン走り、砂埃が舞う。横断歩道に信号がない。私はサッサと渡るがSO君、なかなか渡らない。KA君の話では、彼は横断には非常に慎重なのだと。日本と違いアジアはどこでも、人間より車優先の社会。罰金がある訳でなし、その方が賢明。

 大きなビルの中の、大きくて豪華なレストランで昼食。飲茶。天井が高く、大きな舞台があって、巨大なスクリーンがある。まるで音楽ホールのよう。舞台にはレーザーカラオケの設備。全部借り切って食事しながらカラオケ大会ができます、とSO君の説明。ウエイトレス、ウエイターはホテル並みのユニフォーム姿。こちらのビールがなくなると、頼まないのにすぐ次を持ってくる。サービス精神旺盛なのか、それとも売上増進のためか。そのくせ頼んだ料理が来なくて、頼まないのが来たりする。味はいい。しかしSO君の話では、一つ一つが小さくなったとのこと。インフレのせいか。周りにいる客は殆ど香港人らしい。勘定はSO君が払ってくれたので、いくらだったか不明。

 バスで民俗村に向かう。乗るや否や忽ち眠る。旅に出て11日目。そろそろ疲れが出て来たか。民俗村は中国各地の建物と人を集め、その中でその地方の特産品を売り、その地方の楽器を奏でたり、etcだ。結構きれいで面白い。丁度水掛け祭りをやっていて、若い男女が桶で水を掛合い、キャーキャーと賑やか。中国人が写真を撮り合っているのを見ると面白い。歌舞伎の「見えを切る」みたいに、大仰なポーズをとるのだ。あれは日本人にはちょっと真似できない。
民俗村パンフ

 施設の真ん中に大きな池があり、そこでボートレースをやっている。長崎のペーロンと同じ、竜頭の船。大きいといっても池は池。スタートして20回も力漕すればゴール。どういう組み合わせか分からないが、選手交替して何回もやっている。選手は上がると制服に着替えている。人民解放軍みたいだ。
高脚踊り
 広場では雑技団の興行。演者は30人ほどの男女。他に5人ほどの楽隊。民族衣装に高さ1.5メートルはあろうかという高下駄を履き、太鼓やチャルメラの音に合わせ、流れるように滑らかに、踊ったり人間ピラミッドを作ったり、宙返りしたり、それを愛嬌たっぷりの表情で演じる。全く休みなしに30分は続いたろう。大したものだ。
 KA君が「どこのですか?」と聞く。SO君も知らないのだと。香港人を差し置いて言うのはおこがましいが、満州族ではないか。前に何かで、祝祭には高下駄で練り歩くと読んだ記憶がある。

 帰りは深せん駅までタクシー。運転手の背面だけでなく横まで、金網でガードしてある。治安の悪さが一目で知れる。昼食をご馳走になったので、お返しに駅近くの富臨大飯店で夕食を奢ることにする。

 車を降り富臨に向かって歩いて行く途中、歩道に並んで座り込んだ連中がしきりに声をかけてくる。SO君にあれは何かと聞く。靴磨きだと。そう言われてよく見ると、なるほど道具が入った箱をそれぞれ横に置いている。時間もあることだしと面白半分、SO君の許可を得てそのうちの一人の前に進む。すると忽ち周りの連中が、バラバラッとSO君、KA君に飛びついた。まるでバッタのよう。彼らはスニーカーだからと断るのに、いっかな手を離そうとしない。見かねて、靴磨き連中から遠く離れた場所まで避難させる。ただ行く前に、料金だけ聞いてもらう。2元だと。日本円で20円。ざっと汚れ取りのブラッシングをして靴墨を塗り、もう1回ブラッシングしてこれで終わりと思いきや、別のクリームを出して何か言う。サッパリ分からないから、向こうから心配そうに見ているSO君を手招きし、聞いてもらえば「高級クリームを塗るから別に5元出せ」だと。要らないと断る。初めから7元と言えばいいのに。多分、7元は彼らの感覚では高いので、最初に言えば断られるという計算だったのか。磨く手つき、道具箱、服装どれもインスタント、素人っぽい。この連中、田舎から出てきて職がない、いわゆる「盲流」ではないか。ともあれネパール以来の汚れを落としてサッパリする。

 富臨大飯店では西式バイキング。約6百元。日本人にとっては大した金額ではないが、中国人から見たら法外なんだろうな。味は今いち。みんな中国風味。ビール、コーヒーは別勘定。コーヒー1杯20元は高い。SO君は面白い。私が勘定書きを見て「コーヒーは別勘定なんだ」と言ったら、早速ボーイを呼び文句を言う。ボーイは「お茶はサービスだがコーヒーは別だと最初に断った筈」と主張する。それでも「負けろ」と頑張る。しまいに気配を察して、向こうのチーフらしいのがこちらに来そう。
SO・KA夫妻
 私は別に負けさせようと思った訳ではないので、「OK、OK」と言って止めさせる。KA君の話では、彼はとにかく何でも値切るのだと。このコーヒーのように決まっていることでも、ダメモト精神でアタックするらしい。見かけはおっとりした良家のぼんぼん風だが、そういうところは中国人の血なんだな。そう言えば先刻、バスにするかタクシーにするか、随分考えていたみたいだ。私みたいに出会い頭に弱いということもなさそう。(写真)左の女性がKA君。日本人です。右がSO君。

  帰りの電車の中は子ども連れの家族で賑やか。それぞれ深せんで買い込んだ、玩具やらお菓子の袋をぶら下げている。元朗に帰るSO君夫妻は上水で下車。 宿に着き靴を脱いだら、靴下が靴墨の色に変色している。ズボンの裾から靴下へ移ったんだ。靴墨の品質が悪いのか、素人に磨かせた自分が悪いのか。

  <5月8日>
  朝10時。YMCAロビーでKA君と待ち合わせ。家内への土産とドリアン買うのにつき合ってもらう。まず、マーケットで中身だけパックしたドリアンを3パック買う。計105ドル。新聞を買い、それで包み、さらにビニール袋に入れて口を縛る。買い物袋に入れ、ぶら下げてシヨッピングに向かう。 何軒目かのブティックでブラウスを買う。「今セールス期間だから○%オフ、それに morning discount が△%。安いだろ。だからパンツも買え」と店員が言う。 morning discount なんて初めて。親子か?と聞かれたので、面倒だから「そうだ」と答える。そしたら「娘にも何か買ってやれ」と迫る。香港人はしっかりしているわ。他でもう一つ何か買おうかと外へ出る。気になるから、ドリアンの袋を鼻に当ててみると、やはり相当匂う。こらいかん。目に入ったマーケットに飛び込み、商品の空き箱を貰い、それに入れる。それでも匂う。ガムテープを買おうとしたが、「売ってないからこれ使え」とテープを貸して呉れる。ガメツイ香港人にしては親切。これで目張りする。買い物済ませて空港へ。

 だいぶ時間があるので、待合室でKA君と暫く雑談。すると目の前で、香港人らしき老
人夫婦が荷物の詰め替えをやっている。大きな買い物袋が一つ空いて、それをしまい込もうとしている。KA君、「あれを貰いましょう」と近寄って交渉。こちらへ来て「15ドルと言っている。高過ぎます」。この際そんなこと言っていられない。大きいが、チャック付きが魅力。15ドルで買いドリアン、リユック、鞄、全部ほうり込む。老人ニコニコして「謝々」と言う。

  やがて適当な時間。PASSENGER ONLYの入り口でKA君と握手。大国主命さながら、大きい袋をヤッコラサと肩に担ぎ、クルリと振り向いて1歩入った途端、そこに居たAIRPORT GURDに囲まれ、袋の中を見せろと言われる。袋のチャックを開けた瞬間、強烈な匂い。万事休す。AIRPORT GURD鼻をつまみ、広東語で猛然とまくしたてる。「分かっとるわい、持ち込み禁止だろ」。本来の荷物だけ取り、ドリアンと袋は心配そうに見ていたKA君に託し、改めて別れを告げる。かくしてドリアン持ち帰り作戦は失敗に終わる。

  羽田に定刻到着。中華航空は事故が多いからチョット怖いが、時間が正確なのがよろしい。税関をパスするとき、職員にドリアン持ち込みの可否について問う。「それは検疫の方で、税関は無関係。検疫の合否はモノに依るようですよ」とのこと。  帰宅して体重計に乗ったら、3キロ減っていた。

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