7. 空港で電話番 グルカ族のガイドと 元グルカ兵のインドラ。昔、インパールで英印軍グルカ大隊と日本軍が戦ったことを知りませんでした。

 ポカラ空港の建物はバラックに近い。小さい。Royal Nepalのカウンターに行くと、またまた2時間のDelayだと。ロイヤルなんて名前ばっか立派で・・・。 思わず「畜生め!」と悪態。2時間は長いよ。仕方なく構内の電話会社へ行き、カトマンズのホテルを予約すべく通話を申し込む。

 電話会社といっても机一つに電話機一つ。電話機はNationl Panasonic。係が一人。インド系のハンサムボーイです。電話はなかなか掛からない。係は掛ける度に"Busy"と言う。入れ替わり立ち替わり客が来るが、市外はみんなBusyで掛からない。回線の絶対量が不足しているのだろう。

 私の電話がやっと掛かった。「Hotel My home?」。 何と相手は「違う」と言い、電話番号を言い始めた。メモするが途中で「アイ」と言われ、はてな? アイなんて数字があったっけ? 分からないから係に代わってもらう。横で見ていたら「8」と書く。聞き取った番号231788で掛け直し。何回もトライしてやっと掛かる。1泊10$で予約できた。「歩き方」で探したホテルです。「空港から送迎有りとなっているがOKか」。「タクシーで来い。代金は負担する」。よし。分かった。

 これで用は終わり。係が電卓を叩いて通話料が130Rs。払って出ようとしたら引き留められた。「何か用?」。相手は電話しながら、「とにかく座れ」という身振り。時間は売るほどある。言われるままに座る。

 このお兄さん、手が空くと話しかけてくる。曰く、日本人のガールフレンドがいていずれ結婚する。日本に行きたい。行けばお金持ちになれる、etc。どうでもいいことだけど、ネパールのこんな山の中に嫁に来たいなんて物好きがいますかいな。試しに聞いてみる。「彼女幾つ?」。「17歳」。「そらダメ」。「分かっている。だから将来の話」。「彼女のアドレスは?」。「?」。「ほらみろ。いい加減なこと言いやがって」。「いや電話番号は知っている」。

 当方あまり英語はうまくない。ときどき筆談になる。横にインド人の旅行者家族がいて、その奥さんと係が「日本人の英語はナントカカントカ」と言っている。下手だ・・ということでしょう。しかし連中の英語も分からない。moneyはモニー。comeはコムと言う。音が籠もる。そのうち、なかなか掛からなかったインド人の電話がつながった。相手はボンベイ。亭主が早口でしゃべる。終わって105Rs。カトマンズより安い。おかしいじゃないか。日本で言えばKDD(国際)よりNTT(国内)の方が高いことになる。係にクレーム付けた。苦笑いしながら一言、「That short」。レシートも出さない。絶対おかしい。おそらく公定の3倍4倍ボラレたと思う。
 ペワ湖畔のLake View Resort。上の写真の所。レストラン兼ホテルといったところ。
 用事が終わってホッとしたらしいインド人亭主に話しかける。体格がよくしかも理知的な感じがする。「プロフェッサーか?」。「いや、化学会社を経営している。韓国と×○△・・。TVで見なかったか? 100人死んだgas explosion◎×▼×●・・・」。横から息子が「109人」と口を挟む。この坊や、見るからに利発そうな顔。どうもこのインド人、韓国の企業と取引があるようだ。そういえばバンコックでチラッと事故の映像を見た。「テグ」と聞こえた。「アー、また韓国がやったな」と思ったあれか。インド人は長々としゃべる。自分の会社の説明らしいが、サッパリ分からない。こっちが黙っているものだからやがて相手も黙り、坊やを連れて出て行った。

 客がいなくなったところで係が「食事は?」と聞く。腹を抑え顔をしかめて見せる。当方さっき、腹を抑えてトイレに立った。それを見ているからすぐ分かったらしい。なら自分の椅子に座れと言う。そして、ポカラ市内は4Rs.市外は断れと。なんとこいつ、自分が食事に行っている間、店番をせよということだ。図々しい奴だな。「なるべく早く帰って来いよ」。

 室内は私と、さっきのインド人の奥さんが女の子を膝に抱いているだけ。所在ないから、カトマンズ空港で名刺を交換したインド人の話を持ち出す。B.Comonって何か、この奥さんの説明で分かった。その上がComonになるのだそうな。日本人はこういう誇示はしないんだが・・・と言ってみる。「それは人による。私はDoctorなんだが:・・・」と微笑。道理でどことなく上品だと思った。被っていた帽子を取って敬意を表す。ついでにもう一歩。「この男はカーストも上の方だと言っていた。私はカースト制度がインドの発展を阻害していると信じている」。するとこの奥さん、猛烈な勢いでしゃべり始めた。「勿論そうだ。しかし今はカーストなど無視するnew peopleが増えている。私もその一人だ」と。「都市部ではそうかもしれない。しかし田舎ではどうなんだろうか?」と私。彼女憮然として「田舎ではねぇ」。意外と素直な人である。

 客が一人入って来た。私を見て怪訝な顔。こちらから「ポカラか?」。「そうだ」。「4Rs」。「高い」。オレの知ったことか。この客2回掛け、8Rs払って出て行く。思わず「I’m useful」。インド奥さん「Beg your pardon?」。聞き取れなかったらしい。もう1回言い直す。分かったらしく「Oh yes!」と笑う。また客が来た。今度は市外。係が食事中と言うとすぐ退散。電話が鳴った。これは予期していなかったから手が出ない。するとインド奥さんが取って、係不在と説明してくれた。

 やがて奥さんは出て行き、入れ替わりに係が帰って来た。こいつよろずいい加減な野郎だから、「Royal Nepal は常時Delayなんだろ」とからかってやった。意外や彼憤然として曰く「それは昨日の雨のせいだ」と。「雨期になるとOn timeは無理。ジョムスン行きなんかアンナプルナの裏側に抜けるんだからそれは厳しいフライトなんだぞ」。そうか。この電話屋はRoyal Nepal 直営。この男いい加減なようだが愛社精神はあるらしい。

 そんなことを言っているうちに、フト気が付いたらいつの間にか客引きが二人横に座っている。フライト到着までの暇潰し。一人は日本語が話せる。日本で3年勉強したと言う。電話屋が「この男は日本から帰ってきてホテルを建てた」。それじゃ出稼ぎじゃないか。二人とも、日本に帰ったら宣伝してくれとホテルの名刺を出す。

 質問。「宿代は何を基準に決めるのか」。「顔を見て決める」。「金持ちか貧乏人か顔で分かるのか」。ニヤニヤ笑って答えない。「僕なら幾らと言う?」。「8$かな」。実際に払った金額ピッタリじゃないか。日本人相場があって、それに旅慣れ度を加味するんじゃなかろうか。そんな気がする。「お客を連れて行くと幾ら貰えるの?」。「50%」。これにはビックリ。「それなら倉が建つな」。「いや、いつも客があるわけじゃない」。そうかもしれない。客よりも客引きの方が多いもの。一目で過当競争と見て取れる。

 「ところでもう行った方がいい」と電話屋が言う。カウンターに行ったらもう乗客も係もいない。電話屋が中へ入れてくれ、「See you」と握手。飛行機に乗り込むまで見送ってくれた。 
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