01.03.11  長城・十三陵
八達嶺
八達嶺長城。一番ポピュラーな所。これは男坂だそうです。

 やっぱり北京は寒い。ホテルの夜は寒かった。布団を一つ掛け増しした。

 朝7時過ぎに、電話で起こされる。チャーターしたタクシーの運転手だ。フロントで待機しているという。約束は8時。時間にルーズな中国では珍しい。

 昨日、故宮の切符売り場で乞食の他に、若い女性が一人、名刺を持って寄ってきた。井上氏が聞く。万里の長城と明の十三陵をサンタナ一台200元で行くがどうか・・・という話。井上氏の目論見では、ホテルでオプショナルツァーに申し込むのがよかろうということだったが、それは相乗りバス。車1台の方がいいに決まっている。ちょっと安いのが心配だが、何回も念を押して、他に何も要求はないことを確認してチャーターすることにした。そいつが来たのだ。

 急いで食事(お粥とマントウだけ)を済ませ、例によってやってきた井上氏と共に車に乗り込む。途中いろいろ運転手に質問。井上氏の推理では、会社の運転手が休日に社用車を利用して小遣い稼ぎをしているのだろうということだったが、実態はそうではなく、これ専門の会社で、昨日のお姐ちゃんは会社の勧誘員だとのこと。

 八達嶺行き高速道路は立派。運転手が「前の北京市長これ」と言って、手を揃えて前に出す。汚職で捕まったということ。この道路で賄賂取ったのかな? 副市長は自殺した。確か王府井のビルの建築だか権益かで賄賂取ったという話だった。その時いい場所を予約していたマクドナルドが、そこをどかされて怒ったんだ。江澤民が上海から乗り込んで行って、足元の北京が言う事を聞かなくて梃子摺った。相当念入りに調べて、逮捕したんではなかろうか。中国は地方閥の国だからね。主席といえども相手によっては思うようにはならないらしい。

 盛んに工事中の居庸関を過ぎ、右手に張家口方面行きの鉄道線路を見ながら走るうちに、八達嶺に到着。井上氏が「右側が女坂、左側が男坂」と言う。ここにも何度も来ているらしい。幾らか緩傾斜の女坂だって凄い登りだ。内心、これは無理かな?と怯む。

 男坂の方に滑り台がある。アプト式レールで人間一人を載せる車がカタカタと上がって行く。オレだけ金を払って、それに乗ることにした。少しでも楽をしたい。

 急傾斜を上がるから足が高く、尻が低くなる。当然体を前に倒さないとバランスが取れない。足を投げ出す式なんでね。僅か10分かそこらだったと思うが、腹が出ているもんだから苦しくて、最後の頃は脂汗が出てきた。飛び降りようかと思ったくらい。

 やっと到着して降りた所で上を眺めると、まだやっと全体の4分の1くらい。ウヘェー。目の前は正に壁といっていいくらいの急傾斜。オレに登れるのだろうか。ま、しかし、意を決して登り出す。

 急なところは、石段一段の高さが大きい。だからゆっくり登る分には意外に楽だった。高度が稼げるわけ。展望台に着いて周囲を眺めていたら、一番下から登ってきた愚妻と井上氏が追い付いて来た。井上氏が「60歳以上の人はここまで登ったら合格です」と言ってくれたので、そこで止まることにする。思いやりのある人だ。二人は更に上へ登って行く。下から見ているうちに、オレも登る気になった。ここで止めたら、愚妻に死ぬまで馬鹿にされる。亭主の権威に傷が着く。フーフー言いながら登った。厚着してきたから汗で下着が濡れた。

 一応観光客が行ける範囲の最高点まで登った。満足して下りにかかる。これはちょっと怖かったね。若いとき多少登山もしたから下りのコツは心得ているが、周囲に人がおり、すれ違うこともある。これが危ない。雨のときは止めた方がよさそう。それと、物売りがうるさい。日本人だろ?と日本語で寄って来る。「香港人だ」ととぼけたが、愚妻と言葉を交わしたもんで、ばれてしまった。そしたらまたナンダカンダと寄って来る。日本人はいいカモなんだよ。

 滑り台の下りに乗る。これはスリル満点。腹の前の直立棒がブレーキ棒。これの操作を呑み込めない内に急傾斜にかかり、スピードが出過ぎて一瞬、レールというのか溝(トライアスロンのコースを想起されたし)から飛び出すかと、冷やりとした。時々事故が起こるんじゃないかと、これは想像。

 それにしても万里の長城というのは、壮大な無駄だね。人間一人だって、あんな急峻な山を越えるのは容易ではない。ましてや荷駄を引き武装した軍団が、わざわざあんな山を越えるものか。谷を伝って来るに決まっている。そこだけ固めれば用が足りると思うんだがね。歴史上、そういうことを言っている中国人はいませんか?

 井上氏は男坂だけでは足りなくて、反対側の女坂も登ってくると一人で行ってしまった。この人短躯肥大。布袋さんのような体格だがエネルギッシュ。毎朝1時間のジョギングを習慣としているらしい。今日はジョギングをこれで代替しているわけだ。

 明の十三陵に向かう。運転手は若い男でおとなしい。それが何か一生懸命言い出した。巻舌音が多くて、中国通の井上氏も聴き取るのに苦労している。同仁堂という薬やに寄ると言っているらしい。やっぱりね。何もない筈はなかろうと思っていたよ。

 野っ原にでかい建物。漢方薬の展示場と工場だとか。個室に入れられ、白い上っぱりを着たじいさんが日本語で能書きを言う。こちらが冷淡なのを見て「興味ありますか?」と言うから、「ない」とハッキリ言ってやったら、あっさり「では止めましょう」と、ホントに止めたのには驚いた。

 外へ出たら若い職員がキャッチボールをしている。「おい、中国人が野球やってるぜ。珍しいね」というオレの声に、片方の奴が「キャッチボールですよ」と笑いながら日本語で言った。おそらく日本留学組だね。

 十三陵は玄室も展示品も、案外質素だな・・という感じ。壁面に華麗な絵でもあるのかと想像していたが、部分的に彫刻があるだけ。

 ここを離れ、車中「お昼は市内で食べよう」と言っていたら、再び運転手が何か言う。井上氏が「近くにレストランがある。運転手がそこにしようと言っているから行きましょう」と言う。一瞬「止めた方がいいんじゃないか」と思ったが、一切井上氏にお任せしているから、異を立て難く、仰せに従うことにする。
 
 続きはまた明日。
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