5.カスカイス  S 兄 ポルトガル三日目(227)はロカ岬へ行くことにした。日帰りです。リスボンは帰国前にまた泊まる。市内見物はそのときにゆっくりすることに。

 リスボンの鉄道駅についてちょっと説明しておきます。ご存知のとおりヨーロッパの鉄道駅は頭端型が多い。日本なら上野駅、新宿駅、東京駅のように、行き止まりのタイプ(この場合山の手線は考えない)。だから、大きい都市になると方面別に幾つもの駅がある。

 リスボンも駅は四つある。前にちょっと触れた市中心部のRossio(ロッシオ)駅。建物の感じからするとこれが一番古そう。しかしここは幹線駅ではない。シントラというロカ岬に近い町までしか繋がっていない。次にSanta Apolonha(サンタアボローニャ)駅。これは市東側の川岸に鰻の寝床のように窮屈な格好で蹲っている。見た目大きくないが、しかし、この駅はスペイン行きの他ポルトガル北部行き列車が発着するから、後背地が広いという意味で主要駅なんだろう。

サンタアボローニャ駅 ケーブルカー・ピッカ線

 三つ目がCais Do Sodre(カイスドソドレ)駅。これは市西側の川岸にあって、テージョ川河口の先、カスカイスという高級保養地へ行く。四ッ目はテージョ川の対岸にBareiro(バレイロ)駅。ここからはポルトガル東部と南部行きの列車が発着するらしい。ここへはフェリーで渡る。

 昨日触れた425日橋は上が自動車道、下が鉄道になっている。だから何もフェリーで渡らんでもこちら(旧市街側)の駅から列車に乗せりゃいいじゃないかと考える。だが先ほど説明したように、サンタアポローニャ駅は細長い。丘と川の間の狭い土地に辛うじて嵌っているという感じ。興津・清見寺の町並みを想起してください。ガイドブックによれば、ホームも縦に並んでいるそうだ。ということは、ホームに余裕がないということでしょう。

 前置きが長くなった。我々はホテルから地下鉄で上記三つ目のカイスドソドレ駅へ。地下鉄銀座線で上野駅へ・・と同じ。ただ、車両や駅階段の巾が日本より広く、乗客はずっと少ない。外からいきなり鉄道駅のホームに入れる点も日本と違う。改札が無いのだ。これは後に乗ったどこの駅も同じ。切符はどうするのか? 見回したらホームの片隅に売り場があった。

 売り場の窓は二つしか開いていない。先客が何人か並んでいる。一つ一つの処理がゆっくり。ポルトガルの皆さんは気が長いと感心していたら、やはり中にはセッカチな人もいるようで、時計を眺め先客の肩越しに窓口を睨み、イライラした様子を見せているうち遂に諦めたのか、スイと離れていった女性がいた。これが中国人だったら諦めるなんてとんでもない。構わず割り込むところ。

 我々の番になり、カスカイス→ロカ岬→シントラ→リスボンの通し切符を買う。ポルトガルは観光に力を入れている。このチケット確か9ユーロくらい。邦貨1200円。それだけでほぼ一日かかるルートを回れる。これが日本だったらおそらく1万円近くになるでしょう。

 ホームに待機していた列車に乗ると間もなく発車。アナウンスも何もない。シートはボックス型。老人・障害者席は色で区別。車両はガチッと丈夫にできている感じがします。暫く市街地を走る。昨日行ったジェロニモス修道院が後ろに飛び去り、やがて郊外へ。まばらに松があり、綺麗な南欧風の建物が立ち並ぶ。明るいレンガ色瓦の屋根に白壁。窓枠は濃いグリーン。もしもう一度チャンスがあれば、こういう家を建てたい。間取りはこうしてああして・・・。空想に耽っているところへ車掌が検札に来た。胸にCPとマークが入ったグレーのジャケット。襟にグリーンの縁取りがある。CPというのは日本のJRみたいなものらしい。CPにはこのあと何回も乗りました。

 途中駅で結構乗客が乗って来てほぼ満席になった。老若男女バランスよく乗っている。司馬遼太郎が南蛮のみちIIに、自分の経験として「ポルトガル人と間違えられた」と書いているが、ポルトガルは一応ヨーロッパの内なのに、人の感じはオリエントだ。北欧系の肌が真っ白で髪はブロンドという典型的な白人は少ない。尤もオリエントと言っても、アフリカ系黒人やこれはアラブ系とハッキリ分かる顔も多い。アラブはオリエントじゃないのか?と言われそうだが、小生の言うオリエントはアジア系。トルコはオリエントでイランはアラブ。いやアーリア系というべきか。髪と瞳が漆黒で肌が白く、そのコントラストが強烈。その印象はモンゴロイド的曖昧からは程遠い。ともあれポルトガル人の大多数はその中間。白人でもなし黒人でもなし。そうかと言って中国人でもない。かなり混血しているようです。

 窓外の風景を見ていると人家の塀、駅舎の壁、橋脚などなどに例のスプレーペンキの悪戯書きが目立つ。これはこの後どこへ行っても目立った。この国もいろいろ問題を抱えているに違いない。帰りの機中でガイドブックを読んでいたら、治安の欄に「リスボン→カスカイス間の列車で50名もの若者が凶器を持ち乗客を脅して金品を奪うという事件があった。だから決して安全とは言えない」とあった。だがそのときは流れ去る窓外の景色に「平和でいいな」とひたすら感嘆。知らぬが仏とはこのことか。約1時間半でカスカイス着。

石 畳 別荘群

 駅を出ると商店街みたいなものが全く無くて、いきなり普通の家並みである。どの家も壁が白いから、なんだか大きい白い布に対面したような印象だ。ガイドブックに従い石畳の道をトコトコと10分。インフォメーションは小さな家。ここで町の地図とロカ岬行きバス時刻表を貰って「地獄の口」へ。行ってみればそこは岩が侵食されてボコボコしている狭い入り江。ただそれだけ。それよりも途中の家並みが素晴らしかった。洒落ている。色合いがいい。見惚れてしまう。

 地獄の口からちょっと先へ歩くと大西洋の海岸。低気圧が来ているのか、大波が岩礁に砕けて壮絶な眺めだ。行き帰りすれ違う人がみんな何か挨拶してくれる。たぶん「今日は(Boa tarde)」か「お早よう(Bon dia)」と言っているんだろう。皆さん優しいです。

インフォメーション近くまで戻り、喫茶店に入る。同じような店が軒を並べていて、どこにしようかと迷います。人が一杯の店を選びました。ショーケースにはケーキ、パンが色とりどり。甘党には堪えられないでしょうね。数人で椅子席を占領している男達。カウンターに寄りかかって店員としゃべりながら食べ飲んでいる女性達。結構賑やかです。

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