05.02.11  蘇州号にて-2
浦東金融中心方向
出航直後。後方は浦東。一際高いビルは金茂大厦。

 蘇州号はゆるゆると黄埔江を下る。船首に近い喫茶室に陣取って左右に流れて行く景色を眺めます。隣に同室の日本人一人。いろいろ説明して下さる。どうやらしょっ中この船を利用しておられるらしい。「今日は大晦日で荷役関係は休み。航行する船も少ない。だからスイスイと進むけれど、いつもはこんなじゃないよ」と。まぁそうなんでしょう。陸上にも係留船上にも動いている人影がない。それでも何隻かの船を追い抜き、何隻かの船とすれ違った。両岸の眺めは美しくはありません。目に入るのは工場とかクレーンなどばかりですから。

 揚子江に出るまで1時間半くらい掛かりました。市販されている上海市地図の上の縁にはその合流点が載っている。しかしこの所要時間から推定すると、あの地図の縮尺は怪しい。市外縁部はかなり距離を圧縮しているのではないか。あれが真正距離であれば、こんなに時間が掛かる筈はない。

 合流点沖には多数の貨物船が停泊中でした。入港しても仕事にならないからでしょう。揚子江はさすがに広い。本当に対岸が見えない。尤も曇天で見通しが悪いせいもある。船に近い右側の岸すらハッキリ見えません。この右岸が全く見えなくなるまで2時間くらい掛かりました。

 私は船酔いする。揺れに敏感。この船はうねりなんか無い黄埔江上でも僅かながらピッチングしていた。船底にはコンテナを腹一杯積み込んでいる。バランスが悪いのかな? 舳先が少し沈む。外海に出たら僅かながらローリングも加わった。用心して乗り物酔いの薬をビールと共に流し込む。先にアルコールを入れておくと船酔いしないのです。同室の人は「酔うと思うから酔うんですよ」と言う。放っといてくれ。わしゃ餓鬼の頃から船には弱いんじゃ。

一等船室の廊下
 話は戻ります。一等船室というのは2号甲板。四人部屋です。私は右舷の一室に三重県津の人と同室。もう一人の老人は(三重津さんの話では)二等船室(1号甲板)ということでしたが、隣の一等船室に若い就職組中国人男性と入った。それだけじゃなく、就職組の小姐達も左舷側の一等船室に入っている。二等船室が満員でそういうことになったらしい。(写真)二号甲板。右に一等船室。左はバスルームなど。

 飛行機の席がオーバーブッキングでエコノミーからビジネス若しくはファーストクラスになったようなものですね。まぁそんなことはどうでもいいんですが、船室のドアを開けていると小姐達のおしゃべりがうるさいこと。

 昼食は持ち込んだカップ麺で済ませた。同室の三重津さんはもう一人の老人と食堂へ行った。Tamura.mさんの蘇州号航海記には「食堂はレストランとカフェテリアの二つ」とありましたが、レストランは閉鎖になっていました。カフェテリアのメニューによるとカレーライスやカツ丼が500円。ビールが大瓶で250円。私はクルーズというからには、食事はホテル並みのお値段と勝手にイメージしていました。これならカップ麺なんか持ち込む必要はなかった。

 久し振りに風呂に入りたい。3号甲板の展望風呂に行きます。無人です。私にはぬるかった。外は曇っていて見晴らしもよくない。期待した程の有り難味はなし。
 喫茶室で日本の週刊誌を読む。昨年夏からの新潮、文春、毎日などが揃っています。読んでいる内に馬鹿馬鹿しくなる。為になる記事といったら文春の「お言葉ですが」くらいのもの。(写真)喫茶室兼閲覧室。前方がよく見えます。この写真は出航前に撮ったもの。
喫茶室兼閲覧室
 夜は食堂へ。各テーブルには既に料理(と言っても一皿)が並べられており、片隅の一卓だけビールが添えられている。ボーイにそこへ案内された。パーサーが来て「今夜は年夕につきビール1本付けて特別サービスで500円です」と。後から三重津さん、次いでもう一人。ここで日本人は三人だけとハッキリした。この人は静岡言葉。聞いたら「わしゃ浜松」と言う。「貿易をしとる」と。ほうほう。いろいろ話している内に、扱っているのは釣り餌、蟹の類。それも500kg単位とのこと。ウーン。ま、輸入しているんだから、500kgでも1頓でも貿易と言えば貿易か。

 三重津さんからいただいた名刺には産権交易所とある。「一体どういう仕事ですか?」と聞くと、「まぁ銀行と同じです」と言う。中国との関係はもう20年になる。仕事は現地政府の要望などを基に日本から産業を誘致することだそう。そして毎月一度上海から船で帰っている。だから蘇州号、新鑑真号については詳しい。今は西安で活動している由。この方のお話は具体性に乏しく、何だかよく分かりませんでした。釣り餌、蟹類貿易の話の方が分かり易かった。お二人とも私より1年ずつ年上。昭和一桁。空襲と勤労奉仕が共通の話題。

 外は雨模様。少し揺れる。次々と小姐達が入ってきて席には着くけれど、大抵が青菜に塩状態。中にはビニール袋に吐く子もいる。吐くくらいなら寝てればいいのに。普通に食事している小姐はホンの数人でした。おそらく全員海を見るのも初めてなんでしょう。折角の料理が殆ど手付かずで下げられた。尤もこの料理、車エビに豆にセロリに干し豆腐だったか。「大晦日の特別サービス」という触れ込みにしてはおいしくなかった。

 同室の三重津さんは早寝早起きだそうで8時には就寝。私も連夜の酒でくたびれている。9時にはベッドに潜り込む。
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