01.10.27/28.  山に登る


 ホテルの食堂の片隅で一人侘びしく食事。食堂は殆ど満席。おそらく地元の人たちでしょう。あっちでもこっちでも杯の底を見せ合う乾杯をしている。女性もやっている。白酒の臭いが強烈に匂う。

 見ているとなかなか面白い。ご馳走になってばかりじゃ面子が立たない・・・ということかな? カウンターへ行ってビールを一箱出させ、それを抱えて席へ戻って行く人がいる。すると相手方がそんな水臭いことを・・・とばかり、それを抱えて返しに行く。こちらは「落としたら割れちゃうなぁ」とハラハラ。

 いくら小生小食といったって、毎度毎度炒面だの炒飯だのの一品だけではかっこ悪い。野菜中心に菜数品と湯、それとビールを注文した。ビールは青島もサントリーもなし。武夷山ビールしかないと言う。それも冷えたのは無い。何回念を押しても「何でビール冷やさナあかんのや」という顔で「没有」と言われる。しょうがないから生ぬるいのを呑んだ。

 しかし何ですね、皆さん。世の中で何が不味いったって、冷えていないビールほど不味いものはないね。世を儚んで豆腐の角に頭ぶつけて死にたくなりました。半分も呑めなかった。さてお勘定。なんとなんと、たったの15元。さすが寒舎と謙遜するだけのことはある。お勘定も控えめだ。

 部屋に戻ってベッドで本を。電灯が暗くてよく読めない。しょうがないから電気消して寝たら、途端に電話が鳴った。フロントからだ。お前は一人か? 然り。 外国人だな? 然り。ナントカカントカ。 我れチンブトンなり。 ナントカカントカ。 これを数回繰り返したら、先方諦めたらしく電話が切れました。たまには言葉ができなくて、かえって好都合なこともあります。なんか「一人同室させろ」と言っているみたいでした。いや、それとも怪しい勧誘だったのかな?

5.山登り
早朝
 朝5時に目が覚めた。窓を開けると青空が少し。目の前は田圃。男の子が牛を追って行く。ずっと先からこちらへ、アヒルの群がやってくる。稲穂の黄色にアヒルの列の白が映える。日本じゃこういう景色は見られない。いいですねぇ。
 7時。迎えのバスで出発。その日その日で乗り合わせるグループが違う。地元旅行社がうまく案配しているのでしょう。
駕籠
 まず「天遊峰景区」へ。川下りで言うと六曲の辺り。川からいきなり切り立った一枚岩の峰。標高差で目測150米くらいか。下からずっと階段が刻んである。見ただけで戦意喪失。小生心疾患の前歴あり。登ることは大の苦手。そこで駕籠のご厄介に。(写真の駕籠に乗りました)

 運賃は160元。こちら登りだけでいいんだ。80元にならない? と言っても、それはできませんとつれない返事。往復乗らなくてはいけないんだそうです。しょうがない。諦めて乗る。ガイドと同行夫婦は表の道。私の駕籠は別れて裏の道を行く。

 途中、休み休み登る。いえ、私じゃありません。休むのは駕籠かき。乗っている方はちっとも疲れない。疲れないけれど、少々恥ずかしい。降りてくる人たちがまじまじと私の顔を見るから。こんな山登れないでどうするの!と顔に書いてある(ような気がする)。

 後棒の男は若くて無口だが、前棒は中年男。すぐに話し掛けてきた。最初は「日本人は好」。次の休憩では「日本の銭持っていないか」。その次には「160元のうち俺たちがもらえるのはホンの一半だ。政府が沢山取る」。この辺でこちら、「ははぁ、来たな」と思う。以前、黄山へ登った私の知り合いが、何とリュック一つ担がせただけで千元取られた。勘定払うときはガイドを通さなくちゃ危ない。
川を見下ろす
 今日は幸い晴れ。頂上からの眺めは極上。眼下に九曲の川。筏の乗客の救命胴衣のオレンジが目に鮮やかだ。周りには変わった形の岩峰群。なかなかのものです。早速待っていたガイドがその辺の景勝の案内をする。下には無くてここだけに生えているという南洋の木。岸壁の刻辞。その中の一つに「漢奸汪精衛」というのがあった。他の字は朱色に塗ってあるのに、この字だけは無色。

 長々とガイドが説明する。同行夫婦が「ほぉー」と言ってチラリとこちらを見た。彼らは初めて知ったのだろう。こちらは知っている。中日戦争後半の南京政府主席。中国側からすると傀儡政権だ。その名がなぜここに刻まれているのかよくわからん。彼は確か日本敗戦前に病死した筈。だから処刑地ではない。第一仮に生きていたとしても、こんな景勝の地で処刑するわけがない。いろいろ考えて、後で到達した結論。当時、民衆に唾を吐かせる為に刻んだのでは?

風葬
 ガイドと共にまた同じ道を戻る。ガイドがちょっと離れた隙に、前棒が「チープチープ」と指をこする。チップと言っているつもりなのだろう。とうとう本音で迫ってきたわけだ。160元て、こちらにしてみると結構大金なんだけどなぁ。下に降り着いて精算。ガイドに160元渡したが、意外にもガイドが「ウーン」と首を捻る。あんた160元て言ったじゃない。「でも彼らは大変辛苦なんです」。結局180元になっちゃいました。
(崖の中腹所々に舟形棺を納めた墓があります)

 この景区を出て、次は「賞武夷茶芸」。掘っ建て小屋みたいな茶店に連れて行かれた。そうです。お茶を売り付けられるわけ。同行夫婦は買ったが、私は既に教え子たちにお土産として沢山貰った。この上買ったら重みで飛行機が落ちると断った。そしたら案外アッサリと諦めてくれた。

 一旦ホテルに戻って昼食。午後は一銭天景勝区と虎嘯岩景区へ。この一銭天というのはなかなか面白かったです。
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