01.10.28.  一 線 天


6.一線天景区
 これは午前中に行った天遊峰景区とは川を挟んで反対側にある。なお、「線」の字は少し違います。つくりが「銭」の方です。

 一線天というのは、パウンドケーキというのがありますね。あんな格好の岩山があるとします。そのケーキに縦にナイフを入れたようなものなんです。下(ケーキの底の方)から上を見上げると、細い空が見えるというわけ。だからお天気がよくないと観光にならない。幸い今日は晴れている。

 岩山の土手っ腹に二つくらい穴がある。風穴と言っていましたが、おそらく人間が掘ったものでしょう。入り口に懐中電灯を貸す親爺がいる。「一つ5毛だ。安いよ」と叫んでいるのに、ガイドは何も言わないから、それを無視して入って行った。10米も入ると壁に突き当たる。そこで上を見ると、なるほど何十米か上部に一条の青空が見える。(下の写真)

一線天
その割れ目がずっと横に長いんです。そこを歩くわけ。何しろ足下は真っ暗闇です。何も見えない。ガイドは慣れているからスタスタと歩く。こちらもその気で歩いたら、向こう脛を岩にぶつけた。段があるんだ。大きく足を上げないと届かないくらい段差が大きい。「よっこらしょ」とかけ声かけて上がったら、後続の夫婦が笑う。何がおかしい! そうか、日本語だからな。

 大きく足を上げてればいいかというとそうでもない。たたらを踏むというんですか、足が空を切るわけ。じゃぁと普通に歩くと、今度は蹴っ躓く。いや大変。大変なのはそれだけじゃない。割れ目の幅が狭い。体を横にしないと通れない部分もある。だから布袋さんタイプの人にはここは無理ですね。もう一つ、閉所恐怖症の人も。
一線天出口
 100米も歩かなかったと思いますが、やはり懐中電灯を借りるべきでした。出てきたら、手の甲に岩で擦りむいたひっかき傷が。服にも少々泥が付いていた。途中、空を見上げたのは一回だけ。見上げる余裕がなかった。(割れ目から出た所)

 そこから今度は同じ景区の中の虎嘯岩に登る。ガイドが「どうしますか?」と問うから、掌を立てて勾配を尋ねたら「対」と言う。急らしい。「じゃ止めとくわ」。そこで私はたまたま通りかかった男に預けられ、ガイドと客夫婦とは別れ、先回りすることに。

 その男、なんだか馬鹿に親切で、「ゆっくり歩け」と言う。平地ならどうということは無いのに。おそらくガイドが、「この人心臓が弱い」とかなんとか言ったんだろう。この男何者だろう。「君もガイドかい?」。「不是」。これくらいの会話は私にもできる。さっき入ったゲートを出たら、そこに置いてあった三輪タクシーに乗れと言う。バンコックでトクトクというあれです。これの運転手だった。

 トクトクに乗っかって大分走り、同じ一線天景区の別の入り口らしき所で降ろされた。料金いくら? 不要。へぇー。中国って面白いですねぇ。こういう奴もいる。顔見知りに頼まれたからか、それともガイドが後で払うと言ったのか。

 辺りを見回し座る所を探したが、入り口脇に竹製の椅子が一つあるだけ。どうも置いてある位置からすると、これは切符もぎりの係員用みたい。今は空いているが、座った途端にどやされるんじゃないか。まぁいいか。その時はそのとき。おそるおそる座りました。

 バスが2、30分おきくらいに来て客を吐き出していく。するとチケット売り場の向こうに並んだ土産物やの女たちが一斉にわめき出す。これ買え、あれ買え。人によって差し出す物が違う。ミネラル水だったり竹細工だったり、手編みのスリッパだったり。ただ一様に店から外へは出ない。規制されているのかな? 

 客が通り過ぎると、パタッと声が止まる。これ何かに似ているなぁ。何だろう? そうそう、巣の中の雛鳥だ。親鳥が餌を運んで来ると黄色い嘴を全開してピイーピイーと餌をねだる。あれにそっくりだ。

 座り込んでから最初の客が来て、切符もぎりの小姐が事務所から出てきた。追い立てられるかと腰が浮きかけたが、何も言わない。客がいなくなったら、私の前を素通りして、少し先の花壇の縁に腰掛けた。意外だった。一般に中国で制服を着ている人は威張っている。この小姐も制服着ているがそんな気配は無い。こちらが観光客だと思って遠慮しているのかな。

 そのうちにまた客が来た。小姐に手に持った切符を見せて入場しようとする。小姐が事務所の中に声をかけた。スーツのお兄ちゃんが出てきて、「ダメだ。切符を買え」と言っている。客は「これはここの切符だ」と主張している。おそらく私と同じで、一旦外へ出たんでしょう。暫く言い争っていたけれど、結局客の方が折れた。眺めていて、そんなの融通利かせてもいいんじゃないの?と思いました。

 そんなこんなを眺めているうちに眠くなり、いつの間にか居眠り。目が覚めて時計を見たが、まだ約束の15:50まで一時間ある。しょうがないから、持参した文庫本を。これ高島俊男さんの「お言葉ですが」(文春文庫)。週刊文春連載のコラムをまとめたモノ。大変面白い。しかも勉強になる。私、今二回目を読んでいるところ。

同行夫婦
 約束の時間に正確にガイドと客夫婦が出てきました。夫の方が私の顔を見るなり、「タイレイラ」と言ってへなへなと座り込んだ。妻の方もゲンナリした顔。相当きつかったらしい。私は同行しなくて正解でした。
(同行の夫婦と)

 言い忘れたけれど、この○○景区ってのが武夷山には他にまだ沢山あります。登山が好き或いは得意という方には、ここはピッタリの観光地だと思います。ただし、二日では短か過ぎますね。

 暫く待って迎えのバスに。途中で他のグループを乗せて駅へ向かう。200米くらい走ったところで、他グループのガイドがストップをかけて急停車。我々のガイドが乗っていない。置き去りにしたんだ。驚いたことに、バスはそのまま200米を猛スピードでバック。誰も誘導なんかしない。いやまことに乱暴。元の位置に戻ったら、我がガイドがトイレから転がるようにして出てきました。危ないところでした。

 武夷山の総評。A、B、C の B ですね。桂林の漓江下りを先に経験していると、どうしても見劣りがします。あの雄大さにはとても及びません。

 帰りの列車。再び硬臥に乗ります。不思議なことに、ガイドに渡されたチケットが南平→上海西になっている。南平はここ武夷山よりも福州寄りです。大きい町らしい。おそらく、武夷山では硬臥票は買えないのでしょう。同行夫婦が先に票を選び、私に渡されたのは下鋪でした。列車に乗り込んだら同行夫婦はサッサと中鋪と上鋪に上がって寝ちゃった。よほど疲れたものと見えます。

 対面の客はグループのようで、その仲間が寄ってくる。そして私の席に座って話し込む。下鋪は一番値段が高く、中国人は一般に下鋪を好むのだとか。しかし、私は嫌いですね。ゆっくりできない。寝台車に乗るなら軟臥の上鋪がいい。

 やっと夜も10時過ぎになって対面の仲間が引き揚げ、横になることが出来ました。夜中に目が覚めた。乗客の誰かが大声で話している。お互いに離れているから大声出すんです。時計を見たら午前1時。全く常識というものが無いんだね、ここの人は。自分が世界の中心だと思っている。

 まだ上海西駅からのバスの話などありますけれど、それはまた次の機会に譲ります。
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