03.11.13  馬上杯を探す

金昌利
燗徳利
分解図
馬上杯

左から。陶器店のブロック金昌利。中国風燗徳利。それを分解するとこうなる。そして馬上杯(推定)。


 古代人@厦門です。こちら快晴ですが、流石にTシャツ1枚ではちょっと・・という気温。ランニングを下に着込んで丁度良いくらいです。

 今日は景徳鎮の話。本来は「江西古鎮探訪記」の中の一節になる話ですが、大した話柄ではないとそのときはカットした。しかし、短信もタネ切れ。帯には勿論襷にも短い話ですが、急遽ピンチヒッターに登用した次第です。

 国慶節の前、日本の友人にメールで、「今度景徳鎮へ行く」と話しました。以前イタリアへ一緒に旅行したことがある高校時代のクラスメートです。その返信に、ベニスで買ったぐい飲み・・・ベネチアングラスを「ぐい飲み」と言っていいものかどうか「?」ですが、それはまぁ横へ置いていただいて・・・、が気に入っている。ついては馬上杯を買って来て呉れぬか・・という注文がありました。ハイ、それくらいはお安いご用。二つ返事で引き受けた。

 私そのとき、「馬上杯って何かで読んだな」と思った。その友人は水滸伝だの三国志だの、果ては曹操の研究書などを原書で読む。そんな男が簡単に言うんだから、現地へ行けばその辺にゴロゴロしているものだと思った。何の疑問も持ちませんでした。

 江西古鎮Wuyuanの中心紫陽鎮で義務不履行のバイクタクシーに腹を立て、Wuyuan北コース一巡の予定を放棄。早々に紫陽鎮を引き揚げ景徳鎮に向かったところまでは既報のとおりです。

 景徳鎮に着いてすぐ長途汽車站へ。ここで上海行きのバス票を確保。何と言っても国慶節期間中。まず足を確保しておかないと不安ですから。で、ここの制服着た小姐に、「陶器の買い物するにはどこがいいか」と聞いた。「街中どこでも売っているよ」と言う。まぁそうなんだろうけれど、こちら土地不案内。重ねて「一番いい所を教えて」と迫った。そしたら「金昌利がいいだろう」と。念のため地図を見せて、そこがどの辺かマークしてもらいました。

 教えてもらった公共バスに乗り、その場所に向かう。市内の目抜き通りを走る。町の規模を感じで言うと、中国では中の下くらいの大きさでしょうか。マクドナルドもケンタッキーもある。若者向けのブティック風の店もある。まぁ古い町から今風の町に変りつつあるという印象です。小姐に聞いておいたバス停がなかなか現れない。景徳鎮を二分している昌江を越えてしまった。昌江を越えると工場が多くなる。煙突が林立しています。国慶節で休みなんでしょう。煙は立っていませんでした。

 しょうがないからバスを降り、反対方向のバスに乗ってまた同じ道を戻ります。確か小姐は「人民広場の近く」と言っていた。その人民広場で降りて広場を一巡。ありました。広場に面する一角に陶器店が密集している。奥に深い。日本で言うと「アメ屋横丁」によく似ています。なお、そこは小姐が地図にマークしてくれた所とは全く見当違いの場所でした。ここの人達は地図を読む習慣が無いんですね。どうも適当な所に○をしたみたいです。

 一口に陶器と言っても使い道、大きさによって種類はいろいろ。店はその種類に応じて専門化している。大きい物は、例えばホテルのロビーなんかに置いてある豪華絢爛たる花瓶。人間の背丈より大きい。そういう店はだいたい大小の花瓶中心。後は、食器中心。それも洋食器が多い。やはりこの国でも、古くからのものは「ダサイ」とする風潮があるに違いない。ですから、まぁ古い物というか何と言うか、伝統的な品物で、しかも小物の店というのがなかなか見当たらない。ましてや酒杯を置いてる店は皆無。

 しかもですね。たまに中国風の食器類を置いてある店で「有没有馬上杯」と聞くと、「馬上杯? シェンマ東西ァ?」という答えが返ってくる。これには困った。何しろ私自身がどんなものか知らない。だからよっぽど日本へ国際電話かけて、注文主に「どんなものなの?」って聞こうかと思った。でも中国電信のカードは持っているけれど、国際電話掛けられる公衆電話探すのも大変。また仮に掛けられたとしても、相手がつかまるかどうかも分からない。

 30軒も当たったでしょうか。面白いものを見つけました。日本の燗徳利に似ています。そしてその徳利の中に嵌め込み式の小さい徳利があり、蓋が杯。周りには漢字がビッチリ書いてある。よく寿司やに魚偏の字を書いた湯飲みがありますね。あんな感じです。字は私には読めない字ばかり。杯の底に「景徳鎮」と書いてある。これが決定打。まぁこれなら馬上杯が見つからなくても、三塁打というところで何とか申し訳が立つ。38元というのを30元に負けさせて買いました。そうそう。これの使い方ですが、大徳利の中に熱湯を入れ、小徳利の中には酒を入れて燗をつけるんです。

 表通りというか、中心的な店のブロックでは見つからない。裏通りへ行ってみた。倉庫みたいな店が並んでいます。しかしそちらは置物が多い。例えば布袋さん。そういう所に馬上杯があるわけない。段々と街外れみたいな方へ歩いているウチに、遂にそれらしい物を見つけました。もう店とも言えないような小さな、そう、八畳敷きくらいの広さの土間。店内三面が棚。そこに小物をびっちり載せてある。その中にあった。杯その物の大きさは小ぶりな湯飲み程度。その下に袴を穿いている。高坏に似ています。馬上杯って馬上で飲むから馬上杯かと思っていましたが、これは馬に乗っている状態に似ている。だから馬上杯か。なぁーるほど。勝手に「これに違いない」と決め込んで即、買いました。15元を10元に値切った。

 結局のところ、合計で40元。注文主が聞いたらガッカリするに違いない。これは天下の景徳鎮でン百元もしたんだぞ。まぁそう言ってもいいんだけれど、見る人が見たら忽ちバレる。嘘は吐かない方が良い。厦門へ帰ってから「安い買い物だったよ」と言って郵送しました。実はこの郵送が大変でした。これだけで短信が一編書けるくらい。ま、長くなりますからそれは省略します。いずれにせよ、無事に着いたと友人から報告が来た時は、正直ホッとしました。割れて着いたら何の意味もありませんからね。
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