03.12.03  鉄観音と黄金桂

 相変わらず晴天続き。日中は暖かですが、流石に朝晩は寒くなってきました。

 先週の木曜日、家内を連れて安渓へ行って来ました。私が以前持ち帰ったお茶を飲んだことがある親しい人に、(家内が)日本を出るとき「同じお茶を送って頂戴」と頼まれたとか。それは日本で売っているウーロン茶とはまるでモノが違います。だから飲んだ人は大抵ビックリする。この前初めて安渓で買った鉄観音秋の新茶も一袋友人に送ったら、その友人は何人かの人に少しずつお裾分けしたらしい。それがたいへん好評だったとメールで言って来た。そう言われるとこれはどうしたってまた送らざるを得ません。そんなこんなで二度目のお茶買いに出掛けたわけです。

 今回は通訳に生徒を一人連れて行きました。台湾企業の総経理夫人。台湾籍の中国人。日本語勉強にしょっちゅう学校に来ている。入り浸っているという方が正確かも知れない。でもチットモ上達しない。「なんで勉強するの?」と動機を聞いたら、「(台湾の)父が日本語がとても上手なんです。だから私は日本が大好き」という答え。ついでに「父がこういう歌をよく歌っています」と聞かせてくれたスキャットがなんとなんと加藤隼戦闘機隊。エンジンの音轟々と・・というあれです。次に「二百三高地という歌もよく歌っています。先生知っていますか?」と来た。私、題名だけでは分らない。その女性は既に40代ですから、おそらくお父上は70を超えているでしょう。察するに私よりもお年上。ちょっと飛躍しますが、こういう人に出会うと、遙か半世紀余を隔てて、昔台湾で日本語教育に当たった先輩たちの余徳にあずかっているような気がします。

 朝の8時。安渓直行のバスに乗って出掛けました。途中の景色その他は前回と同じ。ちょっと違ったことと言えば、隣の席に座ったおばさんがしきりに干し梅のお菓子を勧める。断り切れなくて一粒頂戴しました。それくらいかな。
農薬の袋
 そのおばさん、土手っ腹に大きく「日本」とプリントされた大袋を持っていました。下に小さく日本三井物産○○○・・・ともプリントされている。農薬の袋のようでしたが、何かというと日本を叩くのに、物の面ではこのように「日本製」を前面に押し出す。そのアンバランスが何とも言えずおかしい。どっちが本音なのか。それとも、どっちも本音なのか。
  安渓に着いてタクシーを探した。最初に掴まえたのは3人と聞いて15元と言う。人数は関係ないだろ。「高い」と言ったらそのまま走り去った。次の奴は10元。バイクタクシーが一人3元ですから、10元ならまぁまぁ。これで茶都まで。なお、ここのタクシーは全部日本で言うと軽のバンです。それにしても15元の言い値が通らなくて走り去った奴は一体どういう了見なのか。これもよくワカラン。10元に値下げしても乗せた方が得じゃないかと思うんですがね。

 市場の様子は前と全く同じ。今度は通訳もいることだし、気後れせずに入って行けました。みんな「これ買え」と声を掛けてきますが、なんせ売り手は大変な数ですから、一々付き合っていられない。適当な間隔で立ち止まっては、差し出される袋のお茶を取り、尤もらしく香りを嗅ぐ。嗅いでいるうちに、香りに二種類あると感じるようになった。甘い香りと、そんなに甘くないのと。こちら素人ですから単純に、匂わないのは古いお茶なんだろうと勝手に決めていた。実はそうじゃなかった。これは後で分りました。
お茶の売り子
お茶の精製
 そのうちに通訳役の王さんが「このお茶いい」と言うのにぶつかった。お値段は100元だと。香りはあまり無い。でも「これはいい」としきりに褒める。やっぱり中国人の感覚は少し違うのかな。私は買わないと断った。第一1斤100元は高過ぎる。この前買ったのは二階の店舗で40元だったですからね。店舗の方が高い。何故かと言うと、茶葉の小枝を丁寧に取ってある。市場のはその処理をしてありません。それで100元というのはべら棒。
 そのまま進んで行きました。すると、さっき王さんが「いい」と言った男が付きまとってくる。実は市場には管理人がいまして、ときどき巡回しては通路に立っている売人を叱りつけている。売人は養鶏場の鶏のように、所定の位置に座っていなければならないらしい。その監視の目をかいくぐって付いてくる。そして60元まで値を下げた。そこで王さん、聞茶をした。そして「私これを買う」と。市場の隅の台秤の所へ行き、「(買うのは)1斤」と言ったらしい。相手が怒った。そりゃそうでしょう。本来この市場は商売人が買い付けに来る所。私らのような素人が来る所じゃない。それが事もあろうに最低単位の1斤なんてんじゃ収まるわけがない。(王さん側の)私でさえもそう思いますわナ。けれども王さん一歩も引かない。結局相手が折れて1斤だけの商売になった。こういうところは私なんかとても真似出来ません。すぐ相手が可哀想と思っちゃう。大甘なんですね。

 まだ話せばいろいろありましたが、長くなりますので省略します。結局私は特に香りがよくて、付いている小枝が少ない言い値30元の物を26元に値切って2kg買いました。この2kg(4斤)でも一悶着あった。相手は「少ない」と言うんです。でも王さん、「アタシが買ったのはたった1斤だよ。それでも売って呉れたよ」と押し切っちゃった。普段は愛想が良くニコニコしている人ですが、それが交渉となると鍾馗さんのような顔になる。とにかく凄いです。この人通訳としては今一つでしたけれど、交渉役としては満点以上でした。

 2階に上がってこの前買った店に。同じ物を買おうというつもり。相手は私を覚えていた。同じ物を呉れと言ったら、「そんなのあるわけない」と言う。一軒の農家で一時に大量には生産できないものらしい。もうとっくに無いよ・・・と。で、同じ農家のお茶だというのが1斤50元。もう新茶は旬を過ぎて品薄ということで、前回より10元高い。その他にこれは最高のお茶と折り紙付けて出してきたのが100元。嗅いでみたがあまり香りが良くない。私が買った26元の方が遙かに香りがいい。それを言ったら「それは黄金桂。鉄観音はそんなに香らない。黄金桂は香りはよいが傷胃だから沢山飲んではいけない。だから値が安いのだ」と。そこで初めて私、市場で売られているお茶は鉄観音だけじゃないのだと知りました。安渓茶は即ち鉄観音という先入観念がありましたから、売られているのは全部鉄観音だと思っていた。

 王さんが買った60元のお茶を試しにこの茶商に聞茶させたら、「これは60元でも高過ぎる」と言われ、王さんガックリ。まぁ鉄観音ではあるんですけれど。私はまたこの店で50元と100元の鉄観音を買い、両手に下げて帰って来ました。

 一口に鉄観音と言っても随分お値段に差がある。それぞれ値段相応であるのかどうか。素人には聞茶程度では分らない。やっぱりうちで毎日飲んでみるしかない。まぁこれから気長にいろいろ試してみます。
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