04.01.11  日本語能力試験-4

 昨年11月に日本語能力試験対策講座について書きました。今回はそのときML仲間tamuraさんからいただいたレスに私からお答えしたものです。保存はしたものの、ここに載せるのに適当かどうか迷いがあったのですが、短信もタネ切れ。何かのご参考になればとupすることにしました。前後関係について不明の点がありましたら、恐縮ですが短信の32から34をご参照ください。


 tamura.mさん 皆さん お早うございます。

 (注)短信33中の「中国の人は場所・道の教え方が非常に大雑把だ」という話について。

>このようなことについては私も北京で経験しました。

 皆さんそうだと思います。

>> だから「日本語は上げる、貰うと区別があるんだよ」と教わってはいても、聴解のような瞬間的判断を要する場合には頭が混乱するらしい。すると、他のフレーズも聴き取れなくなる

>この「上げる」は「与える」という意味ですね!

 そうです。私は漢字を多く使う方なので・・。テキストでは「あげる」とひらがな表記です。

>この「ウーン」とつぎの「ウン」の違いは?

 実際によくあることですが、子供は一瞬、外出を止められるかと思った。で、その感情が「ウーン」に出た。ところが、「気を付けてね」で止められるのではないと分って、次は普通の「ウン」になった。出題者はこんな細かいところまで気を配っている。私はそう感じています。でも受験者はそこまでは分らないでしょう。これが分る生徒は一級クラスの力があります。

>中国では「貸す・借りる」という習慣がないのでしょうか?

 現実生活上の習慣はあると思います。ここで私書き忘れたのですが、貸借も「借」一字で片付けているようですね。ですから、「貸しました」、「借りました」の関係(方向)が咄嗟には分らないようです。練習問題(テープ)で何回もやらせるんですが、上級の生徒でも非常に単純な問題をかなり間違えます。

 「右」、「左」もそうです。「エーと、右ってどっちだっけ?」なんてやっている。聴解は一瞬の勝負ですから、言い換えますと音は次から次へと現れて次の瞬間には消えていくわけですから、そんなところに気を取られていると他のフレーズを聞き落としてしまう。結果として何が何だか分らなくなるわけです。

>この“くるように”という表現が中国では無いのでしょうか?

 上の場合、答えからの推測ですが、「私はこの本を田中さんに返す」と鈴木先生に言われた女性は、「ああ自分が田中さんの所へ行って返してくるようにということだ」と理解するワンクッションがあるでは? つまり、ご質問の「・・・くるように」という表現は無いのではないか。

 でも自信はありません。この辺は漢語堪能な諸先輩のご登場をお願いしたいところですね。

 まあ一般論ですが、日本語には婉曲な言い方が多い。漢語は一字一字の意味が明確かつ直截です。だから文が短くて済む。その代わり、相手は状況を読まなくてはならない。ちょっと脱線しますが、私のいい加減な説明でもここの人はすぐ理解する。短い文でまぁ不自由なく暮らしているわけです。

 和語は文が長くなるという短所がありますが、表現の肌理が細かいという長所があります。尤も外国人がそれを理解出来るようになるにはかなりの時間が必要ですから、その分習得が難しいのでしょうね。

 tamura.mさん  今日は。

 (注)短信34中の女性が「スケートに行かない?」と男性を誘っている話について。

>この問題、この男性と女性の力関係ですね。女性の方が強いので男は折れて「じゃ行こうかと」と2.スケートに行ったとなるのでしょう。男の寒いのに?と答えながら「スキーなら行ってもいいよ」というのも矛盾していますね?

 現実性がないというか、「ちょっと変だな」と感じる問題は結構あります。例えば引っ越しの挨拶。奥さんが「私は電話料金や水道料金の精算に行くから、あなたはご近所にご挨拶に回って」と言う。旦那が「ご近所は君が行ってくれ。そっちはボクがするから」というのがあります。この「そっち」が生徒には分らなくてひどい結果でしたが、それはまぁ横へ置いて、日本の現実として、どんなに内弁慶の旦那でも引っ越しの挨拶くらいはするだろう・・と私は思うんですよ。どう思われます?

 問題の妥当性は別として、こちらじゃ引っ越しのとき挨拶回りなんかしないのかも知れない。「ご近所に挨拶って何ですか?」と聞かれましたから。居民委員会に届けて、あと挨拶するは精々両隣くらいなのかな。私の今住んでいるマンションなんか隣の人と顔会わせても挨拶しませんからそれもないかも。

 外国で日本語を教える大変さよりも、日本の生活を知らないのに日本語を勉強することの方が大変だと毎日感じています。例えば、動物園の話が出て来ます。猿、鼠、象など動物の単語が出てくるんですが、こういう言葉が字ならともかく音だとすぐ分らない。誤答が多いのでこちらはビックリする。しかし考えてみると、こういう言葉は幼児の時に絵本などから肌にしみこむように覚えるわけですよね。それに対して、ここの生徒達は大人になり日本関係の仕事をするようになって勉強を始めたわけですから、そういう幼時に覚えるレベルの言葉は知ってはいても身に付いていない。別の言い方をすれば体に浸み込んでいないんです。

 私の立場としては「勉強が足りない。もっと努力しなさい」と言わざるを得ないんですが、言いながらも「(彼らも)大変だな」と惻隠の情を禁じ得ません。
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