04.06.06  お茶の値段
安渓行きバス
安渓行き直行バスです。道中ずっと日本の演歌を流していました。

 厦門からバスで2時間の山の中。行政区画としては泉州市に入るのですが、安渓市という町があります。ここはウーロン茶の一種鉄観音の産地として有名。最初は知り合いの徘徊老人さんから教えられ、面白そうだと一人で出掛けて行きました。以来日本から人が来る度に連れて行き、先週3回目の家内を連れて行って、指折り数えてみたらもう6回目になっていました。これだけ通いますと、初めは何が何だか分からなかったお茶の値段のことが、少しは見えて来たような気がします。

 厦門市内にもお茶の店はそれこそ星の数ほどあります。石を投げればお茶屋に当たる。なら何もわざわざ時間を掛け、バス代払って安渓まで行くことはない。理屈を言えばそういうこと。けれども徘徊老人さんの曰く、「安渓では厦門の値段の10分の1で買えますよ」。この一言が効きましたね。半分じゃありませんよ。なんたって一割。こりゃタダみいなものだ。バス代掛けても十分ペイする。それともう一つ。市内のお茶屋だと選択肢は値段だけ。「これは香りがどう、味がどう」なんて言えるほどの種類は置いてない。それじゃつまらない。私、割にお茶の味にはうるさいんです。

 厦門の蓮花路口から「厦門→安渓」直達バスに乗り出掛けます。料金は片道20元(労働節などの祝祭日は25元)。先週のバスではどういうわけか、道中ずっと「浪花節だよ人生は」など日本の歌謡曲を流していました。まさか私と家内が日本人だと見破られ、サービスのつもり・・・というわけじゃなかろうと思うんですが。

茶都センター

 安渓の町外れに茶都という巨大なマーケットがあります。環状の建物が幾つも連なっていまして、それぞれの建物は間口三間ほどに細かく仕切られ、各仕切に卸商が入っています。その数はおそらく何百軒にもなるでしょう。
(写真)茶都センターの建物。この左右にずっとビルが連なって
 います。

 中央環状ビルの真ん中は生産農家または仲買人の市場。「1と6の日」に市が立ち、大きなビニール袋に商品を詰めた売り子がザッと1,000人は並びます(普段の日でも500人は並ぶ)。買い手はこの中を歩いて品物を選ぶわけです。口で言うといとも簡単みたいですが、これが(本当に買う気なら)容易な作業じゃありません。

市の日
 何をもって品質を見分けるか。そりゃ誰だって色、形、香りと言うでしょう。それでたぶん間違いは無い。でも・・・ですね。パッと見て、或いはちょっと鼻で嗅いで、それで「これはいい」と直感的に分かるかってェと、正直な話ワカランのです。仮に売り手が10人だとします。その中で一番いいのを選ぶんなら、そりゃ誰だってできる。でも1,000人から居るんですよ。100人じゃなくて1,000人。その中から最良のものを選ぶなんて至難の業。

 ここで「できない」なんて言っちゃうと話は終わり。頑張って物色を続けましょう。色。形。どちらでもこれは良さそうだと勘が働いたら、少し物を取って嗅いでみて、香りも良ければ聞茶に行きます。市場内に聞茶の場所があるんです。持って来た茶に熱湯を注ぎ、香りを嗅ぎ、味見をします。一発で満足できる品に当たるかというと、まず当たらない。そこで結果を待ち構えている売り手にダメだと告げる。売り手は簡単に諦めない。しぶとく食い下がって来ますがそれを振り切って次に向かう。これを繰り返しているうちに気に入った物に当たればそこで値段の交渉。話が付けばそれを買って引き揚げる。

入れ物の店
 でも不幸にして気に入った物になかなか当たらないと、次第にお腹がガボガボになり、挙げ句、味も分からなくなります。玄人は口に含むだけで聞茶できるようですが、こちらは素人。まともに飲んじゃうからダメなんですね。そうなったらもう市場の方(農家直売の方)は諦めて、卸商の店へ行きます。
(写真)お茶の店だけでなく、このように容器の店もあります。

 茶都に店を構えている卸商。私、正確な数は知らない。前に書きましたとおり、この茶都というのは環状の建物が幾つも連なっていまして、その建物の外側と内側の両サイドに間口三間くらいの店がビッチリ入っている。控えめに勘定してもおそらく200軒は下らないと思う。そんなに沢山ある店のどこを選ぶか。どこでも同じなのか。それとも違いがあるのか。これはこれでまともに考えたらまぁ一つのいわゆる大問題です。まぁしかし、これは最初に来たときに私、売り子の列の中でどうしたらいいか途方に暮れていたとき、執拗にくっついて来た若い男に連れて行かれた店がある。以来、直売市場の方で良いお茶に当たらなかったときは、その店へ行くことにしています。

 この店は直売市場を見下ろす二階にある。表は鉄の格子シャッターだけ。店内にあるものは商品用冷蔵庫と椅子、茶器が載った机に湯沸かし器、真空包装機くらい。ガランとしていて貧相な店です。中二階があって、カーテンが引いてある。店主夫妻は若い。どうもそこに寝泊まりしているみたいです。トイレが店の奥にありましてね。今回私、ちょっと使わせて貰った。手を洗おうと水道の竜頭を捻ったが壊れていて水が出ない。横に元栓みたいなのが見えたからそれを捻ったら、なんと背中側にあったシャワーから勢いよく水が出て頭からズブ濡れに。店主のかみさんが慌てて濡れたシャツをドライヤーで乾かしてくれましたが、まぁそんな店です。

 こういう店に入った場合、メリットが三つあります。一つは座ったまま店主が出す品の聞茶ができる。もう一つは品物が大体精製されている。直売市場の方は茶葉にまだ小枝が付いている物が多い。つまり粗茶なんです。三つ目は品質と値段にある程度信頼がおけるということ。直売市場の方はどうも売り子の言う値段にバラツキが多くて、それが正当な価格かどうか判断が付かない。店の方ですと、味・香りと値段とがだいたい相応なんです。もっと具体的に言いますと、例えば40元のもの、60元のもの、100元のもの(単位は1斤)を個別に聞茶します。すると味・香りがほぼ値段に比例するんです。ただし、その値段が他店と比べてどうかはまた別の問題ですよ。

 今回は予算50~100元と提示して50元、80元の二種類聞茶しました。家内は80元の方が、私は50元の方がおいしく感じた。味の好みって個人差がありますね。これはどうしようもないことです。店主はこちらの意見が割れたのを見て、更に120元の品を出してきました。家内はこれが気に入って「買う」と言う。で、家内は「少し負けて」と交渉しましたが店主は「一銭も負からない」と言う。

 この店主若いけれどシッカリ者。実は私達、先々週も日本から来た友人夫婦を連れてここへ来た。そのときは70元の品を5kg(10斤)買った。「負けて」と言ったら1斤につき5元値引きしました。それは(まだ小枝を取ってない)粗茶だからという理由で。この店では今まで何回も買っていますが、値引きがあったのはこのときが初めて。今回はまた元に戻って頑として値引きに応じない。まぁ負けない男です、この男は。
若店主とその店

 そこで私、「もう少し他の店も見て来る」と言って家内を連れ出しました。実は今回、同僚の先生に別の店を聞いて来た。その先生の教え子の親戚の店だそうで、高山茶専門だとのこと。そこが高いか安いかは別として、ちょっとこの辺で目先を変えてみようと考えたのです。ただ、分かっているのは店の名前だけ。場所が分からない。茶都事務所で調べようと探したがそれも見当たらない。そこでやむを得ず、端から一軒一軒見て歩きました。あいにくその店は茶都の西の端でした。私達は反対側の東の端から探し始めたものですから、見付けるのに小一時間掛かりました。茶都は兎に角大きいのです。

 探し当てたその店は表のガラス戸がキチッと閉まっていて、中に入ったら冷房がよく効いていました。店内は整理が行き届きとても清潔。さっきの若いお兄ちゃんの店とは大違い。店主に同僚の紹介を受けて来たことを告げ、いろいろ出して貰いましたが、ここはもう最初からお値段が1ランク違う。150元、180元と出て来た。色(透明度)、風味。確かに値段が高くなるほど良くなります。しかし私の感じでは、さっきの店の120元とこちらの150元とでそんなに大きな差はないような気がする。

 でもここで店主が言うことが良かった。「私どもは品質(採れる畑や作柄によって違う)に応じて値段を決めています。でも100元以上のお茶はこれは趣味のレベルのお茶です。普段飲んでおいしいかどうかということならば、100元以下のお茶で十分おいしいんです」と。つまり、無理に高いものを買うことはないよ・・・と言いたいらしい。これ筆談なんですが、店主はときどき分からない字があって、息子に聞きながら書く。前科何犯かありそうな怖い感じのおっさんでしたが、これが笑うとあどけない。
冠芳茶行と主人
 結局、家内が友人に「高くてもいいから上等のものを」と頼まれて来た分、それとお使い物にするものをここで買いました。そうしたら、洒落た小箱入りのお茶や茶器セットを二揃えもおまけに呉れた。更に「吃飯了マ?」と聞く。もう午後二時を回っている。私達はとっくに食事は済ませていましたけれど、あれでもし「未だだ」と言ったら「食事しましょう」なんてことになったのかも知れない。
おまけ

 そうそう。家内がお勘定66○元かを「600元にして」と交渉したら、「ああシンシン」といとも簡単に負けてくれた。そして、息子がホンダ・アコードの新車でバスターミナルまで送ってくれました。私達はかなり儲けさせたんでしょうね、きっと。

 話は未だ続きます。私、週に一度、掃除のおばさんを頼んでいます。このおばさんの弟がお茶の商売をやっているらしい。私が安渓へお茶を買いに行くと聞いて、弟のお茶を買ってくれとサンプルを持って来ました。40元、60元、70元、80元、100元と色とりどり。私達が安渓へ行くのには、一つには暇潰しの意味もあるんです。ですから、そのサンプルは貰ったままほっといた。で、帰って来てからフト思い出してそれを飲んでみましたら、中の70元と80元のお茶が滅法おいしいんです。あの若い店主が出した120元のお茶に勝るとも劣らない。この掃除のおばさんの弟は店を持ってはいないらしい。

 で、以上の事柄を総合すると、お茶の相場は第一段階では採れる畑や作柄で決まる。しかしそこから先のお値段は、扱う商人の店構えや格などで違ってくるようだ。すると、店は持っていないが良い品を仕入れられる商人を知り、そこから買うのが一番得ということになる。今のところ私はそう見ています。

 後からちょっと反省の念が。私の身の回り、例えばマンションの会計係の女性は月給800元。1斤180元のお茶を買ったなんて聞いたらどう感じるだろう。他人様の注文なら兎も角、自分が飲むお茶なら身の程を考えて買わなくちゃいけないな。
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