04.11.02  留学先国の順位
W学生in Kyoto
上師大の教え子で最優秀だったW学生。今は岡山大学の修士課程に在学中です。彼女の留学の経緯についてはこちら

 某国立大学教授の方から「中国から外国への留学生について」ご質問がありました。問題が大き過ぎて満足なお答えは出来ませんでしたが、ご参考までにここにその問答を載せます。


 日本の大学に相当多くの中国人留学生が来ますが、彼らについての質問です。
 (私の大学にも多いですので、彼らの背景を知っておきたいということもあります。)

1) 日本に行ってみたいと思う中国人大学生は、非常に多いのですか?

 これは大学生に限りません。多少とも海外に関心がある中国人なら誰でもそうでしょう。障壁は資金とビザです。

2) 欧米留学組に対し、日本留学組は格が落ちると言われていますがそうですか?
  あるとすれば、かなり大きな差ですか?


 このご質問には残念ながらお答えできないです。と申しますのは、欧米に留学した人を私、知らないのです。唯一、上師大で教えた男子学生がオランダに親戚がいるということで、卒業したらそちらへ留学する予定と聞いておりました。実際に留学したかどうかは確認しておりません。なお、その学生は私の試験で落第点を取りました。少し足して卒業させたというレベルでしたから、オランダのちゃんとした大学にそのまま入れたとは考え難いですね。

 そうそう。他に、J市で知り合いになった人の息子(地元大学の学生だった)が、私の帰国後フランスに留学したと聞きました。当時その子が優秀だとは聞いていませんでした。それどころか、「頭がおかしくなった」という噂があり、その直後に留学したと聞いた。で、その子が本当に向こうの大学に入ったかどうか。親は「入った。送金が大変だ」と言っていますが、それは誰にも確認は出来ないことです。ただブラブラしているだけかも知れない。

 留学を私費留学と国費留学に分けて考えなくてはいけないと思います。それと、機関からの留学がある。国費と機関の場合は、本人の資質について既に或る程度の選抜が為されている。その選抜段階で欧米組と日本組に能力格差が認められるのかどうか。これは、私にはそういう人達との接点が有りませんので、皆目見当も付きません。

 しかし想像では、例えば大学進学の段階で、英語とかフランス語に進む者は日本語へ進む者より一般的に優秀だ・・・ということはあるかも知れません。中国では英語やフランス語などは親とか親戚の誰かが話さなければ、子供の時から親しむことはまずありません。これは或る程度、日本でも同じ筈。すると、生まれながらに家庭環境が良くて、学校もエリートコースを進み、留学も欧米へ・・・という流れはあるのではないでしょうか。

 しかし、私費の場合は、行き易い所へ行くというのが自然な流れでしょうから、欧米へ行くのが優秀で、日本へ行くのは少し落ちるという図式は必ずしも当てはまらないのでは?  特に東北出身者は中高校で日本語を習っていますから、どうしても日本へ行き易くなりますが、ご存じのとおり東北三省は遼寧省の一部を除き、中国でも貧しい土地です。彼らを北京や上海の良家の出身者と対比した場合、文化的な感覚に於いてハナっから劣るということは、それはもうどうしようもなくあるだろう。すると日本行き組の方が劣って見える。そんな気がします。しかし、それと頭脳の明晰さとはまた別モノではないでしょうか。

 大学留学に限って言えば、帰国後の能力発揮において、欧米組の方が貢献度が高いということがあるのではないか。それは欧米の大学、特にアメリカの場合、やっていることがpragmaticだからではないか。日本の大学は抽象的なことばっかりやっているからアカンのでは?  (まぁ専門にもよるかも知れませんが)。それが欧米組、日本組の評価にreflexする。それはありそうな気がします。

 もう一つ。中国人にも欧米崇拝の傾向があり、そのreflexもあるかも知れない。上師大芸術学院に東京学芸大学で修士を取り滞日通算8年の先生がおられますが、よく「欧米帰りが優遇され日本帰りは冷遇される。こんなことなら日本に残った方がずっと良かった」とこぼしておられました。その方に言わせると、欧米帰りが優秀だという根拠は何もないのだと。

 余談ですが、横から中米関係を見ていますと、政府ベースでは反目・警戒し合っていますけれど民衆ベースでは、特に中国側はアメリカが好きですね。私は双方気質に於いて通じ合うところがあると見ています。そして日本に対しては、どこかに「この成り上がり者め」という意識がある。

 企業で働いていた人の場合はもう、勝負にも何にもならない。日本の大企業で中国人をプロパーで雇う場合、幹部にはまず登用しない。ずっとペイペイです。だから幾ら居てもスキルも何も身に付かない。それと、中国人は根っから起業好き。鶏口となるも牛後となる勿れ。長く他人に雇われるということがない。勢い日本に長く居ても、深い専門知識は身に付かない。
 
3)

 志望する日本の大学の情報をどうやって入手していますか?何が、留学先を決>めるキー・ファクターになりますか?

 大学の情報はやはり、かつて日本に行ったことのある中国人や私のような日本人に聞くということではないかと思います。ネットで調べれば大学名は幾らでも出て来ますが、ランクや評価は分りませんものね。

 行き先のキーファクターは私費留学の場合ですと、バイトのチャンスがある大都市優先でしょう。大学の優劣は二の次ではないか。バイトの必要性が低い者は当然、高ランクの大学を選びます。

4)

日本に留学することで何を得ようとするケースが多いでしょう? 日本語? 専門知識? 留学という箔? アルバイト? 鬱陶しい中国社会からの脱出? etc. etc,

 これは全部あるでしょう。今、私のクラスに胆嚢肝臓専門の医博の外科医が来ていますが、日本語を10年も勉強しているそう。なんでかというと、将来笹川奨学金で日本へ行く予定だと。医学方面は笹川財団に好かれているらしく、チャンスが多いのだそうです。何で日本なの? と聞きましたら、そちらの手術では日本が世界一なんだと言っています。私はアメリカじゃないかと言ったんですが、彼は「いや日本だ」と言う。で、彼の目的は専門知識でしょうね。

 アメリカで想い出しました。厦門で最初に働いた塾(今とは別の所)に居たとき、私のクラスに武漢大学卒の建築設計士が入って来ました。40代で既にかなり成功しているのに、これから日本へ勉強に行くのだと。そのうちに本当に行っちゃった。何で日本なの? と聞いたら、日本の建築設計は世界一だと。アメリカじゃないの? いや、アメリカの建築は中国人には参考にならない・・と言う。どうもお世辞じゃなさそうでしたね。彼の場合、芸術的?な或いは巨大な建築には関心がなく、生活に密着した建物が専門で、そういう方面では日本の建築設計が優れているのかも知れません。

 しかし、彼も大学時代第二外国語は日本語だったそう。日本に建築関係の知り合いが居るとも言っていましたから「日本の建築は世界一だ」というのは口実で、実は日本の方が行き易いだけのことだったかも知れません。上の医博の場合も建築家の場合も、その辺はよくワカランのです。

 要約しますと、上のご設問には順位付けが必要で、専門知識は高レベル者の欲求ということ。アルバイトを選ぶのは低レベル者。でも、彼らは最初から「アルバイト」「箔付け」なんて、決して言いませんよ。何か別の口実を掲げます。とにかく、目的はケースバイケースです。

5)


 留学に際し、積立金のようなものを提出しないといけないと聞きましたがそうですか?そうだとすると、どのくらいの額ですか?それは帰国後、返還してもらえるお金ですか?

 機関からの留学ではそういう話を聞きます。上師大から1年龍谷大学へ研修に行った先生は2万元積まされると言っていました。勿論、それは帰国後返還されます。
 
6)


 日本では今、国公立大学でも、年に50万以上と、学費は相当高いですが、それをどうやって捻出できるのかわかりません。ちなみに、中国の大学の学費はどれくらいなのでしょう?

 上師大では年間学費(寮費こみ)3,600元だったと記憶しています。生活費は別で、これは個人差があります。

7)

 日本から帰ってきた留学生は、親日派になることが多いですか?あるいは日本が嫌いになって帰る留学生が少なくないのでしょうか?

 どうなんでしょうか。個人の心境の奥まではなかなか分りませんから正確なお答えは難しい。非常に大きく括りますと、嫌日派になるのは少数だと思います。根拠は、こちらで会った日本留学(滞在)経験者の誰からも一度も「日本でこんな嫌な目に会った」と言われたことがありません。そういう不愉快な目に会わなかったはずはないと私は思います。でも、それを言わないということは、礼儀上言わないということも考えられますが、それよりも、良い印象の方が強かったからではないか。そんな気がするのです。

 一つ例を上げます。上師大で日本に4年間私費留学した女性の院生と知り合いになりました。大正大と学芸大に2年ずつ居たと言っていました。南京事件のことを調べている教授に頼まれて、当時の軍人の姓名の読みと、軍の編成について教えてくれと私を訪ねて来たのがキッカケで知り合いになりました。日本の中国侵略については当然怒っているわけで、表立って日本について褒められた記憶はありませんが、ある時、地下鉄駅で割り込んだ中国人に彼女が注意したら「隙間を空けている方が悪い」と言い返された。そしたら「お前みたいな奴がいるから中国はバカにされるんだ」と言い返していました。

 大袈裟に言うと、彼女は中国に対してどうにもならない絶望感を持っているのです。そういう人は多いですよ。 

 もう一つ言いますと、日本に留学後帰国する人数と残る人数と比較した場合、残る方が多いのでは?  私が参加している中国人中心のMLの主要メンバーを見ますと、みんな出自がいいですよ。それでも帰国しないということは、日本で暮す方に魅力を感じているからでしょう。勤め人の場合は、理想は「日本の給料で中国に駐在すること」でしょうね。

 仮に帰国組の方が多いとしても、それは残る場を得られなかったからであって、もし就職できたら、日本で働くだろうと思います。例え嫌な思いをすることは多くても、やはり日本は彼らにとって魅力的な土地のようです。兎に角日本は便利だとみんな言いますもの。

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