04.11.24. 学力差はあるか
孔乙己
上海・柳州路の咸亨酒店(紹興料理)。手前は魯迅の小説に出て来る孔乙己の銅像。この写真は本稿とは関係ありません。
 これは「58.留学先国の順位」の続編です。ここから入られた方は、できたら58.から続けてお読みください。

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 肝腎の学力の話ですが−−日本に来ている中国人留学生を見ていて(といっても、英語とか、文化関係の分野に限られますが)日本人の中程度の大学生に比して、なお学力が低いような印象を持っています。随分基本的なことも知らないで、よくまああの苛烈な入試をくぐりぬけてこれたものだと不思議になるのです。そちらの大学で教えておられて、一般学力という観点で、中国人大学生をどのように捉えておられますか?

  東京学芸大で修士を取り、滞日8年の経験がある上師大の先生に最近上海で再会した折その件について質問しましたところ、大要下記のようなお答えでした。

 1.

 日本では中国侵略の歴史を教えない。中国でも同様に教えないものがある。互いに教える範囲が違う。一概に中国人の学力が低いとは言えない。
 2.


 中国で最優秀の学生は欧米へ留学する。日本へ行くのは二番手三番手だ。その中 で優秀な学生が東京など都会の一流大学へ行く。質問者の先生のおられるような地方大学へは日本へ行く留学生の中でもレベルが低い学生が行くのだ。
 3.

 日本の大学の先生にもレベルが低い人が結構いる。中国の学力レベルが日本より低いというのは偏見だ。 
 私は実際に教えた経験から、やはり中国の一般学力レベルは低いと感じています。これは頭の切れとは別の話です。知識の幅、量において日中間には相当な差がある。その原因は、下記の事情の複合ではないかと考えています。

 1.

 根本的な問題として、知的好奇心の強さに差がある。一般に中国人は自分の生活に直接関係がない事には興味を示さない。また、海外事情に疎い。
 2.

 内陸部では未だ義務教育が遍く普及しているとは言い難い。詳しくは「旅行記のページ・貴州」の項をご覧下さい。
 3.  学校では政治教育が最優先とされている。その分、学ぶ分野が狭くなる。
 4.  教師のレベルが低い。文革の影響が未だなお大きいのではないか。
 5.  教え方が暗記中心で、思考能力の養成は重視されていない。
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 日本でいろいろな経験を積んだ留学生が帰国し、その経験は何らかの形で中国社会に伝えられていますか? それとも、あまり外国の情報が広まるのはよろしくないという雰囲気があって、おおぴっらには言えない、書けないという状況でしょうか? 『人民日報』や大学の『広報』的な出版物に留学生体験記が載せられたりしますか?
 私にはこのご質問にお答えできるほどの知識がありません。代わって知人の徘徊老人さんにお聞きしました。徘徊老人さんは中国籍ですが幼時から日本で育った方で、職業は写真家でいらっしゃいます。

 かつては私、中国メディアに関係がありましたが、今は縁が切れ余り情報をもっておりませんので、残念ながらお役に立てないと思います。私の友人白西紳一朗氏が理事長している社団法人「日中協会」では、昔から中国の留学生の世話をしていました。確か園田天光光などが責任者でした。この会は第1回の中国の国費留学生などの頃から、日本の文化などと接触させる機会を作ったり、見学旅行などを実施していました。就学生などが来る以前の話です。この人達は中国に帰ってそれぞれしかるべき役職についております。

 でも、今は日本に来る留学生は、国費よりも自費の人が圧倒的に多いのが実情です。質的にもさまざまなので、特別にメディアに登場するということがありません。私の付き合いと知りうる範囲で下記の問題をお答え致したい所存です。満足行く回答にならないことを、あらかじめご承知ください。

 お訊ねの件、日本からの留学生が帰国しても、その経験が余り紹介されないのは、外国の情報が広まるのはよろしくないということではありません。中国の通信社の電子版では世界各地のニュースが流されています。これは昔の文革時代と違い、情報も多岐にわたっています。むしろ留学生が普遍的になったので、これといったことが無ければニュースになりません。時代の変化です。今留学生も中国では珍重されることも無く、就職自体が難しいのはその証左です。留学も遊学ではどうしょうも無いほど厳しくなっているのが、いまの中国の留学事情です。

 留学生で大学から派遣された人は、大学の広報誌などで研究成果を報告していますが、個人的な情報を発表することは特にありません。そもそも個人的な経験、情報はその人が得たもので、これを他にやすやすと教えることはありません。中国の多くの部門では、情報を独占することによって、他者との優位性を保持できるので、一般的に他者に教えたり他者と共有することがほとんどありません。

 人民日報では、留学生の現地での活動などを特集する場合を除き、一般的に余り多くありません。以前教育ページで特集していたのは、受け入れている保証人や大学の教授がどれほど親切に指導したり、世話してくれているかなど、留学生との交流記事が、それぞれの国に行った留学生の投稿などで、紙面を構成していました。この点は日本と同様に、投稿という積極的な行動をしなけば、記者が自発的に留学生の生活などを取り上げることがほとんど無いのです。記事になるかどうか? 紙面があるかどうかです。

 結論から言えば、大っぴらに書けないというよりも、媒体が余り無いといっても過言ではありません。話がそれますが、中国は日本よりもカメラ人口が多いのにもかかわらず、媒体が少ないので、写真を撮っても発表できる場が、ほとんど無いのが実情です。ご質問では言論統制と言う懸念を持っておられるようですが、文革の時期に比べて遥かに開放的になっています。私の実経験からです。写真に関してではヌード写真の内容は、日本に勝るとも劣ることが無いという面さえあります。


  まだ続きます。
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