07.03.17 近代国家とは−1
万里の長城
中国の近代化にはこの長城を造った時代のような強大な権力が必要。しかし強大な権力は民主化を拒む。これこそ矛盾。

 改革開放政策、GDP至上主義は急速な経済成長をもたらしたものの、沿海部と内陸部、一部の富者に多くの貧者という格差、環境破壊、官僚腐敗の深刻化を生んだ。この儘行けば民衆の不満が爆発し、共産党政権は吹っ飛ぶ。危機を感じ取った政権はここへ来て「全面的小康社会、和諧社会の実現」を唱え始めた。調和が取れた社会の実現を目指そうということ。調和が取れた社会とは即ち近代国家の実現。しかし、それは果たしてうまくいくだろうか。

 何事であれ先を見通すのは難しい。ましてや中国は大きい。問題は複雑多岐に亘る。でも仮説を立てなくては話は始まらない。私の予想は「七対三でうまくいかない」だ。成否は政権の統治能力(Governability)如何にかかっている。政策が正しくても、それが厳正に執行されなくては意味がない。この国はそこが怪しいのです。

 具体的な話をしましょう。税制。税は国家なり。国家は税なり。税収がなければ政府は何もできない。以下は私の体験です。

 初めての中国。江蘇省某市政府で働きました。月給1000元。日本なら源泉徴収がある。でも税金は取られなかった。係の役人に課税下限を聞きました。確か月額800元という答えだった。すると私の報酬は課税対象になる。「どうして税金取らないの?」と聞いた。「いやー」とニヤニヤ笑うだけで、回答はなかった。後で分かったこと。私が働くこと自体が違法だったのです。Fビザでしたから。そして日本語教室は役人のアルバイトだった。私の報酬と家賃払った残りは役人の副収入ということ。これでは表に出せない。私に労働(Z)ビザを発給することもできない。

 しかしこれも後で知ったことですが、仮にZビザが発給されたとしても183日(注)は滞在しませんでしたから、それだと課税対象にはならなかったですね。

(注)日中租税協定(83年9月締結)
 (5)給与所得の課税
 日本の居住民が中国において勤務し取得する給料等の報酬については、中国国内での滞在が当該年度で183日を超える場合所得税が課税される。

 じゃ役人は(給料から)税金払ってるのか。そう聞いた。すると「当面課税は保留されている」という答えでした。理由を聞いた。やはり「いやー」と言うだけ。ワケが分からない。要するに税法はあっても執行されていないということです。なお、この時期(98年)所得税、法人税は地方税でした。税制が明文化されたのは94年です。

 次に働いた上師大。ここは国家専家局の招聘状が出てZビザで赴任した。1年半居ましたし月給は課税下限を超えていましたから、当然上記課税対象に該当する。でも課税されなかった。他の中国人教師に聞いたら「この安月給で? 冗談じゃない」という答え。皆さん放課後は外部でアルバイトもしていました。けれども税金払っている様子はなかったな。ここも某市と同じで、税法はあっても執行されていないようだった。もしかしたら教師は免税だったのかなぁ? 中国は省(市)によって制度の運用にバラつきがありますから。
                                           (続く)
TOP  前頁 NEXT