07.03.19 近代国家とは−2
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ここは大学の正門。掲示板には小学生に向かって言うようなことが書いてあります。

 次に行ったのは廈門。老教授協会と立派な名前がついた外語培訓学校です。営業届は出してあるようだった。でも学校の認可を取っていない。「資格はあるんだけれど認可を取ると色々面倒なことがある」と経営者は言う。面倒とはおそらく、毎年監査があるとかそういうことでしょう。だから私に対する招聘状は経営者の友人の会社名義で、滞在目的は調査研究だった。表向き私は無報酬でした。

 最後が先月まで行っていた上海の外語学校。ここも「申請すれば認可は取れるが面倒だから」と学校としては無認可だった。営業届けも出してあったかどうか? ビザは私が香港まで行って1年Fビザを取った。香港だと招聘状無しでもビザが取れるんです。ここでも報酬は貰ったけれど税金は払わず仕舞い。

 一体何を言いたいのか。「行政が機能していない」と言いたいのです。どちらも生徒が月当たり1000人はいる学校です。月に300人新入学者がいると仮定して、1人仮に授業料1000元とすると、月収は30万元(邦貨180万円)になります。10%の課税でも年36万元の税収になる。税務当局はそれをみすみす見逃している。教師の報酬についてもしかり。

 何故課税しないのか。世間に無届け営業が多過ぎる。捕まえてもすぐ余所へ引っ越し看板書き換えて営業する。役人にしてみれば労多くして功が少ない。ならば袖の下取って目をつむってる方がいい。それが常態になっているんですね。官民共に規範意識が希薄なんです。そこに「私」はあるが「公」がない。

 都市はそれでもいいんです。特に上海なんかは大企業があるから、小物から徴税しなくてもやっていける。けれども地方、特に内陸部の農村に行ったら税源がない。しかし役人は一杯いる。中国の人口当たり公務員数は世界でも多い方でトップクラス。だから貧しい農民からでも何だかんだと勝手な名目で税金を取る。これが中国何十年来の宿痾「乱収費」です。

 実例を挙げましょう。廈門で教えた子が1ターム終わったとき、次のステップには進まないと言う。理由は田舎の親に有り金全部上げて空っ尻になったからだと。何でも村に道路が通るとかでその親に来た割り当てが6千元。その子が親に上げた金が千元。残り5千元の当ては全く無い。親が首をくくらなければいいが・・・と、その子は心配していました。

 中国の義務教育は86年に法制化された。けれどもその費用を中央、地方のどちらが負担するかは明文化されなかった。結果、負担は最末端の郷鎮政府に押し付けられた(注)。郷鎮政府には予算がない。人民から教育費という名目で金を取り学校の維持費に当てる。教科書代も生徒の負担です。義務教育とは名ばかり。年収1千元がやっとという貧困地区では子供を学校にやれないのです。これで近代国家と言えますか?

(注)中国の行政単位: 1.中央。 2.省、直轄市。 3.市(1級、2級、..)。4.県。 5.鎮(町)、郷(村)。この下に(正規の行政単位ではないが)居民、街道委員会というのがある。基層と称され、ここでは選挙による代表の選出が認められています。いわば自治組織ですね。

 温首相は真面目、庶民寄りで知られている。視察に行くとき決して地方政府がセットした場所には行かない。そこは嘘で塗り固められていると知っているから。地方農民の窮状を救うべく遂に昨年、西部地区の義務教育費として中央、地方合わせて361億元の支出を決めた。更に07年(今年)〜10年、中部・東部にもこれを拡大。中央政府1254億、地方政府928億元、計2,182億元の支出を決めた。絶対に他の費用に流用してはならないとの命令付きです。でもそんなの地域の広さ、人口の多さを考えたら微々たる金額です。

 遅きに失したとは言え、英断と言えば英断。けれども義務教育制施行以来ここに至るまで、いったい何年経っていますか? 建国以来何年経っていますか? 中国は大国。英才は雲霞の如くいる筈。にもかかわらず何故ここまで何も出来なかったのか? そこが問題なのです。
                                         (続く)
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