07.03.24 近代国家とは−4
徐匯中学
徐家匯天主堂の近くにある中学。元はミッションスクールだったのではないか。大都会にはこういう古い学校がたくさんあります。

 06年、中央政府は農民負担軽減のため農業税を全廃した。これは画期的な出来事です。農業税は春秋戦国時代から連綿と続く中国の基幹税ですからね。で、その補填はどうするのか。経済成長に伴い国全体で税収は年々増えている。更に8年から外資優遇税制を廃止する。それらの増収分を振り替えるつもりなのでしょう。

 しかし昨年1年で見る限りでは(農業税廃止の)結果はよくない。却って乱収費がひどくなっているとか。末端の郷鎮政府にとって最大の税収が突然消えてなくなった。上級政府がその補填をしてくれなければうまく行くわけがない。その辺がどうもキチンと手当てされていないようです。

 前頁に書いたように過去、財政請負制、分税制、義務教育制など中央政府は近代化に向けて努力をしてきた。それは認められる。しかしそれが何故うまく行かないのか。私の見方では、中央は大枠を決めるだけで細目は省政府に任せてしまう。或いは事柄によっては細目も決める。けれども省政府以下の段階でそれが守られない。その結果最末端がしわ寄せを受けて苦しむ。一言で言えば、中央政府に末端までコントロールする能力がないということです。

 中央政府の威令が及ぶのは省のトップレベルまで。その下になると殆どその地方出身者が占めている。法治ではなく人治の世界。各人自分の利益しか考えない。元々この国では権力=蓄財手段だった。その昔地方長官に任命されるということは、この際財産を作りなさいということだったのです。それがこの国の文化・伝統。実際にこの国で暮らすとその辺の機微が肌で分かります。

1.江蘇省某市政府;役所内で日本語教室を主催。収益は役人の副収入。 2.上師大;国際文化交流学院という器がある。食堂付き外賓楼と中国語学校を経営。外国人専家を外賓楼に入れ、大学から宿代として1人月6千元の支給を受ける。私費留学生も外賓楼に入れ、ドル建てで費用を徴収。外部でアパート借りれば当時2千元が相場でした。食堂の料理も外の2倍高い。職員にはタダで食べさせる。要するに文化交流学院と称しながら実態は外国人で儲ける企業。 3.廈門の外語培訓学校;大学英語教師の副業。大学の同僚を講師として雇い、マンションを二つと日本車を買うほど儲けていた。使われる同僚達は陰で文句を言っていた。 4.上海の外語学校;表向き交通大学国際交流学院の関連校と称し、課税を免れているようだった。交通大学国際交流学院にはそれなりに付け届けしているはず。また学校の経営者は不動産屋も経営している。

 このように中国人はみんな副業を持っている。政府予算の中に「予算外資金」というものがあります。これは行政機関のみならず党、司法、軍などあらゆる機関が副業で稼ぐ資金。お上がやるから上記のとおり下々も見習うのです。ですから実際の所得は個人も国全体でも公表数字より多い。ということはアンダーグランドマネーが多いということ。そういう社会で人が私利追求に走らないわけがない。結果、腐敗が蔓延することになる。これで近代国家と言えるでしょうか。

 以下は文春3月特別号の記事。贈収賄立件件数です。

 79年            703件
 89年         60,000件
 99年      1,010,000件
00〜04年   18,450,000件  ← これはチョット信じられない。多過ぎる。

 04年末時点で海外に逃亡した官僚が6,500人超。持ち逃げ金額450億元超。実際はこれより遙かに多いらしい。政府自身でも正確に把握できないのだとか。腐敗をなくさなくてはならないと党中央は躍起です。しかし立法、行政、司法三権がそれぞれ独立していない一党独裁下で、しかも前述のように地方政府の独立性が強い体制下でそんなこと出来るわけがない。みんな同じ穴の狢なんですから。

 最初に書いたように、腐敗だけでなく地域間格差も縮小しないと政権は保たない。国内企業であれ外資企業であれ内陸部に産業を誘致し就業先を創出しなくては格差は縮まりません。しかし内陸部が産業誘致に有利な点は人件費が安いことだけ。工業の集積度、資材・部品や製品の輸送効率などにおいて内陸部は沿海部にハッキリ劣る。

 更に省毎の閉鎖性も問題。例えばスズキが長安自動車(重慶)と合弁した。市場としての将来性を買ったのでしょう。けれどもいざ行ってみたら製品の販売がうまくいかない。どこの省も他省の会社の製品は買わないのです。それを見ているから外資は内陸部にはなかなか進出しないでしょう。おそらく内陸部の活性化は遅々として進まない。農村の不満は益々膨れ上がる。

 結局のところ、この国が諸々の課題を急速に解決し近代化することは非常に難しい。私はそう見ています。
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